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北朝鮮国営テレビ、名物女性アナウンサーが電撃引退…金正恩の意向で30代へ交代か

文=相馬勝/ジャーナリスト
北朝鮮国営テレビ、名物女性アナウンサーが電撃引退…金正恩の意向で30代へ交代かの画像1李春姫氏(提供:CKCTV /AFP/アフロ)

 昨年の北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験成功、さらに1994年の金日成主席死去、2011年の金正日総書記死去など、北朝鮮の重要ニュースを50年近く伝えてきた同国国営テレビ局の朝鮮中央テレビの看板アナウンサー、李春姫氏が引退することが明らかになった。李氏のアナウンス手法が、金正恩朝鮮労働党委員長が目指す「近代的で先端技術を駆使する北朝鮮」というイメージと食い違うためだという。北京の外交筋が明らかにした。

 李氏は75歳の高齢にもかかわらず、現役で活躍してきた名物アナウンサーだったが、12年以降テレビ画面から姿を消していたため、引退説のほか、死亡説まで飛び交っていた。しかし、16年1月に北朝鮮が4回目の核実験を成功した際、ニュース番組に登場し、抑揚のある特徴的なアナウンスをしたことで復活を印象付けた。

 韓国などの北朝鮮ウォッチャーは李氏について、「北朝鮮放送に“ピンクレディ”が登場すると悪いニュースが伝えられる」と話す。「ピンクレディ」というのは、かつて日本で一世を風靡した女性デュオではなくて、李氏のニックネームだ。李氏が主にピンク色のチマチョゴリを着て放送に登場するためだ。金日成氏と金正日氏の死亡時には悲痛な泣き声で、ミサイル実験成功時には興奮した声でニュースを伝えた。

 とくに金正日氏死亡の際は、第一声で「人民、朝鮮労働党中央委員会、朝鮮労働党中央軍事委員会、朝鮮国防委員会、最高人民議会常任委員会、内閣が、もっとも悲痛な心情でお伝えします」などと語り、ほぼ5分後には感極まってから涙で声が出ず、しばらく泣きはらしていたことで有名だ。

 李氏は1971年からテレビに出演している。アナウンサーのなかで最高位の「人民放送員」という役職をもち、発展に貢献した「労力英雄」として表彰されてもおり、「北朝鮮政権から信頼されている数少ない人物の一人」と韓国の専門家は指摘している。

 金正日氏が死亡し、新しい指導者として金正恩氏が登場してから4年間、姿を現さなかったものの、16年初めの核実験(水素爆弾)成功という北朝鮮にとって極めて重要な「慶事」を世界中に知らしめるアナウンサーとして、李氏を起用せざるを得なかったということであろう。

 とはいえ、このような著名なアナウンサーである李氏が引退するのは、やはり金委員長の決断だからだ。前出の北京の外交筋は、金委員長が思い描いている北朝鮮の変化の方向と李氏のアナウンス手法がアンバランスだからだと分析している。

 すでに朝鮮中央テレビのメインアンカーは30代とみられる人物と交代しており、李氏の引退は良くも悪くも、北朝鮮の変化を如実に映し出しているといえそうだ。
(文=相馬勝/ジャーナリスト)

相馬勝/ジャーナリスト

相馬勝/ジャーナリスト

1956年、青森県生まれ。東京外国語大学中国学科卒業。産経新聞外信部記者、次長、香港支局長、米ジョージワシントン大学東アジア研究所でフルブライト研究員、米ハーバード大学でニーマン特別ジャーナリズム研究員を経て、2010年6月末で産経新聞社を退社し現在ジャーナリスト。著書は「中国共産党に消された人々」(小学館刊=小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作品)、「中国軍300万人次の戦争」(講談社)、「ハーバード大学で日本はこう教えられている」(新潮社刊)、「習近平の『反日計画』―中国『機密文書』に記された危険な野望」(小学館刊)など多数。

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