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沖田臥竜コラム

「川崎発砲事件」ヒットマンに立ち向かったのは組長の姐さんだった……暴力事件の連鎖は続くのか?

文=沖田臥竜/作家
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「川崎発砲事件」ヒットマンに立ち向かったのは組長の姐さんだった……暴力事件の連鎖は続くのか?の画像1川崎の発砲事件の現場

 

 それは夜の食事を終え、車で帰宅後すぐのことだった。五代目稲川会三代目山川一家の若頭補佐である大井組・大井司組長が乗る車両に1人の男が近づいてきた。1月17日、午後8時25分頃のことである。場所は神奈川県川崎市川崎区。男はまるで大井組長らが帰ってくるのを待っていたかのように、運転する組員に話しかけた。

「運転していた組員は客人が来たのかと思い、対応にあたったようだ。そこに話しかけてきた男が背中に隠し持っていた拳銃を取り出して、組員に向け発砲している」(捜査関係者)

 銃弾は組員の右首に当たったものの、幸い生命にかかわる事態にはなっていない。その直後、危険を察知した1人の人物が車を飛び出し銃弾を放った男へと立ち向かっている。その人物とは、大井組長の姐さんだったのだ。

「組長の姐さんは男が背中から拳銃を取り出した瞬間に、男の後ろから男に立ち向かっていったという話です。姐さんといえども女性です。普通なら悲鳴を上げるでしょうが、この姐さんは違いました。男は立ち向かってきた姐さんにも銃弾を放ち、肩に怪我を負わせたのです」(前同)

 その後、男は現場から逃走しており、現在のところまだ男の正体すらわかっていない。そのため、業界関係者の間では、事件の背景についてさまざまな憶測が取り沙汰されている。

「こんな大事件をしかけた人物として、大井組長とは因縁浅からぬ、ある組織の元幹部の名前が浮上してくる。両者はいがみ合っていた時期があったからだ。捜査当局から漏れ伝わる話でも、その元幹部の関係で、稲川会とは異なる関東の有力組織が事件に関与していた可能性もあるようだ。だが、こればかりは犯人が逮捕され、その供述を待たない限りはっきりしたことは言えない。ただその有力組織では、この事件に絡んでいないか、上層部が幹部組員らに確認したなんて話も聞こえてきている」(某組織幹部)

 男は躊躇することなく、降りてきた組員と組長の姐さんに向け引きがねを引いている。初めから脅しなどではなく、殺意を持って銃弾を放った可能性が高い。だが、撃たれた組員らは、男の顔に見覚えはないと語っているらしいのだ。すると、男はヒットマンということになる。

 ヒットマンを送ってまで命を狙うというのは、ヤクザに対する当局の締め付けが厳しくなるなかで、よほどのことだ。業界関係者の間で、その背後関係についてさまざまな憶測が飛び交っているのも必然なのかもしれない。

宮崎では六代目サイドと神戸サイドが衝突

 事件解明まで時間がかかるのではないかと思われるこの事件に対して、すぐさま犯人が逮捕された事件も起きている。

 川崎市の発砲事件の翌日18日。埼玉県さいたま市内に本拠を置く住吉会系組織の事務所で、同事務所の幹部組員ら2人が、別の組織に所属する組員に刃物で刺されるという事件が起きたのだ。

 犯行に及んだ組員は、そのまま事務所から逃走したのだが、防犯カメラの映像などからすぐに特定され、自宅にいる所を逮捕されている。

 そして、まるで暴力は連鎖するかのように、この事件の数時間後には、宮崎県内で六代目山口組系組織と神戸山口組系組織が衝突。組員同士の乱闘にまで発展したというのだ。

「六代目山口組分裂後、この地域では両組織による衝突が一向に絶えない。1980年代には、宮崎県内で宮崎抗争と呼ばれ、実の兄弟同士が敵味方に分かれて激しくやり合った大抗争が起きている。その系統を受け継ぐ組織が、くしくも今度は六代目サイドと神戸サイドに分かれてしまうことになった。いつ激しい衝突が勃発してもおかしくない緊張状態が続いている」(地元関係者)

 川崎、埼玉、そして宮崎と立て続けに事件が起きている。最近は、ヤクザ同士の派手な衝突が少なく、比較的静かな日々が続いていたが、これまで水面下で燻り続けていたものが一気に噴き出そうとしているのか。負の連鎖が続かないことを願いたい。

(文=沖田臥竜/作家)

沖田臥竜/作家

沖田臥竜/作家

作家。2014年、アウトローだった自らの経験をもとに物書きとして活動を始め、小説やノンフィクションなど多数の作品を発表。小説『ムショぼけ』(小学館)や小説『インフォーマ』(サイゾー文芸部)はドラマ化もされ話題に。最新刊は『インフォーマ2 ヒット・アンド・アウェイ』(同)。調査やコンサルティングを行う企業の経営者の顔を持つ。

Twitter:@pinlkiai

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