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なぜ小保方晴子氏は「STAP細胞を見た」と思い込んだ?間違った発表をする科学者たち

構成=大野和基/ジャーナリスト
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― 出版にあたって、製薬会社や科学者から脅迫されませんでしたか。

ハリス 脅迫はされませんでしたが、確かに誰もが喜んでいるわけではありません。しかし、多くの科学者は、これがリアルな問題であることを認めています。実際に起きているからです。NIH(国立衛生研究所)の所長は、「この本は科学者が真剣に取り組まなければならない問題を提起している」として、私に感謝しました。

 同時に、もし自分の間違いを認めれば助成金が切られると、常に懸念している科学者もいます。本書が出版されてから、アメリカでは生命科学研究の助成金が劇的に増えました。つまり、本書は助成金にマイナスの影響は与えていないということです。

― 論文を提出すると、そのジャーナルが出版される前にpeer review(査読:科学論文を出版する前に、その内容を同じ専門分野に関して権威ある研究者によって評価する制度)がありますが、もし提出した人がすでにノーベル賞を受賞していれば、かなり有利になるのではないでしょうか。

ハリス もちろんそうです。それはしょっちゅう起きていますね。著名な科学者がもっとも注目されます。しかし、本書の執筆のために、非常に有名な科学者らに取材しましたが、彼らでもその分野の定説に反する内容であれば、なかなか発表の機会を与えてもらえません。

 スタンフォード大学のマーク・デイヴィスという科学者は、免疫システムについて研究していました。彼は人が免疫システムを深く誤解しているという結論に達しました。その論文をpeer reviewのメンバーが査読したとき「我々は免疫システムを誤解していると思わない」という理由で、発表を拒絶されました。もちろん、著名であればあるほど、発表の機会を得やすいことは確かです。

― 最後に、日本の読者に伝えたい、もっとも重要なメッセージはなんでしょうか。

ハリス 本書で伝えたいことは、生命科学の研究は問題がたくさんあるが、ほとんどの場合、意図的ではないということです。今やるべきことは、科学者を間違った方向に動かしてしまう、インセンティブが何かを考えて、そのインセンティブを直すことです。科学研究が効率よくできるように、そのインセンティブを修正する努力をするべきです。本書には、このプロセスを向上させる方法について考える方法が実際に書かれています。
(構成=大野和基/ジャーナリスト)

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