ポスト五輪の東京~2020年以降も勝つまち、負けるまち~ポスト五輪を待ち受ける23区の勝ち目、弱り目

東京、団地の街の逆転劇…足立・葛飾・江戸川区が再開発ラッシュでタワマン乱立

葛飾区の京成立石駅(「Wikipedia」より/LERK)

「行ったことはないし、行ってみたいとも思わない」

 そんな声が聞こえてきそうなほど、東京の外れのイメージがつきまとう足立区葛飾区、江戸川区の東部3区。ここで今、再開発のラッシュが始まっている。

 駅の中に地元の英雄・栃錦の像がある、ローカル色満載の江戸川区小岩。2015年、南口の商店街沿いに住宅を主体とする29階建ての再開発ビルがオープンした。同じ南口の駅前では22階と33階のマンションを含む3棟の再開発ビルが工事中で、20~26年に順次完成の予定だ。駅の北側でも、スーパーマーケットを含む商店街のど真ん中を高層マンションに建て替える計画が検討中だという。

 お隣の葛飾区の注目スポットは、区役所最寄り駅の京成立石。1000円でべろべろに酔えるところから「せんべろのまち」と呼ばれる「下町の酒都」が今、一新されようとしている。北口側では区役所の移転と36階建てのマンションの建設が、南口東地区は34階建てのマンションへの再開発が、ともに20年代半ばを目途に進行中。さらに、南口西地区の再開発も控える。せんべろの聖地と言われた「呑んべ横丁」は北口再開発の中に飲み込まれてしまった。南口西地区の再開発が進むと、立石のもうひとつのシンボル「仲見世商店街」も姿を消す。

 足立区の千住は、今や「穴場のまち」ではなく「本命のまち」となったようだ。駅前商店街の中ほどにある旧ダイエートポス跡地は、20年には「千住ザ・タワー」と名づけられた30階建てのマンションに生まれ変わる。足立区の地場産業である皮革工場があった千住大橋駅前は、若いファミリー層が集うまちへと姿を変え、超高層マンションの建設も予定されている。北千住駅東口駅前でも再開発の計画がある。

 洗練されていないゴミゴミしたまち。逆に言うと、ヒューマンスケール感漂う昭和レトロなまち。そこに今、ニュキニョキとタワーマンションが建ちだしているのだ。

団地のまちが秘める逆転打の可能性

 東京東部のイメージが色眼鏡で見られる背景のひとつに、都営や都市再生機構(UR)の賃貸住宅団地の存在がある。23区でもっとも公営住宅(その大部分は都営住宅)の割合が高いのは足立区。公営・公社・URを合わせた公的賃貸住宅が多いのは江東区、北区、足立区の順。図表1を見ると、港区で意外に公営住宅が多いことに驚かされるが、全体的にはやはり葛飾区、江戸川区を含む東京の東部が上位に並んでいる。

 加えて、東京東部には1960~70年代にできた古い団地が多いという特徴がある。建物はエレベータのない5階建て以下の箱型。標準間取りは2DK。見るからに老朽化が進み、居住者は高齢化し、空き家も目立つ。

 団地とともに歩んできた周囲のまちもまた、かつての活気が失われ、くすんで見える。しかし、そんな今の悩みの裏には未来に向けた一発逆転の可能性が秘められていることを見逃してはならない。分譲団地と異なり、賃貸団地は建て替えのハードルが低い。大家さんが都やURなので、事態を改善しようという意向はなおさら強く期待できる。高層住宅と比べ、工事もはるかに容易だ。

池田利道/東京23区研究所所長

東京大学都市工学科大学院修士修了。(財)東京都政調査会で東京の都市計画に携わった後、㈱マイカル総合研究所主席研究員として商業主導型まちづくりの企画・事業化に従事。その後、まちづくりコンサルタント会社の主宰を経て現職。
一般社団法人 東京23区研究所

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