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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

とっくに日本は輸出ではなく投資で食う国…「債権国だから豊か」の誤認識が経済衰退招く 

文=加谷珪一/経済評論家
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債権国のメリットは自己資金で投資ができること

 直接投資の主な中身は、日本メーカーが現地生産に切り換えたことによる現地法人の株式などであり、地域別では、やはりアジアと米国が多い。コスト削減を目的に工場をアジアに移した日本企業は多く、自動車産業では米国からの圧力もあり、以前から北米での現地生産を強化している。

 現地生産を行った場合、販売した製品の代金は日本の本社ではなく、現地法人が受け取ることになる。日本の本社が得られるのは、販売代金ではなく、現地法人からの配当や利子、あるいはロイヤリティ収入のみである。

 つまり日本メーカーは輸出によって直接外貨を得るという方法ではなく、現地生産に切り換え、現地法人への投資というかたちを通じて、外貨を獲得する構造に変化しているのだ。

 これが、世界最大の債権国である日本の実状ということになる。

 債権国であることの最大のメリットは、投資をする際の原資を外国から調達する必要がなく、自前の資金で実施できる点である。外国から調達した場合には、利子や配当を支払う必要があるため収益率が落ちる。

 近年、アパートやマンションを一棟丸ごと購入して賃貸する、いわゆる大家さんビジネスを行う人が増えているが、不動産投資は融資を受けて実施してもよいし、自己資金でもよい。だが融資を受けて投資を行う場合には、金融機関に支払う利子の分だけ高い収益を上げる必要があり、物件取得のハールドが上がる。自己資金による投資では、その必要がないので物件選択の幅が広がるのだ。

 外国から資金を調達している場合には、リーマンショックのような非常事態が発生した場合、資金回収が最優先され市場が混乱する可能性もあるが、自前資金の場合には、そうした事態が発生するリスクを低く抑えることもできる。

債権国が享受すべき本当の利益とは

 しかしながら、あくまで債権国であることは有利な条件でしかなく、心の拠り所にするような対象ではない。むしろ輸出で稼げなくなった今、債権国であることの立場をどれだけフル活用できるのか、徹底的に考え抜く必要があるだろう。

 もし、このまま海外投資で失敗せず、対外債権を保有し続けることができれば、基本的には「大家さん」ビジネスと同じなので、何もしなくても海外から一定の利子や配当が入ってくる。外国人にせっせと働いてもらい、日本人は不労所得を得るわけだから、これはオイシイ話といってよい。

加谷珪一/経済評論家

加谷珪一/経済評論家

1969年宮城県仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。著書に著書に『貧乏国ニッポン』(幻冬舎新書)、『億万長者への道は経済学に書いてある』(クロスメディア・パブリッシング)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)、『ポスト新産業革命』(CCCメディアハウス)、『教養として身につけたい戦争と経済の本質』(総合法令出版)、『中国経済の属国ニッポン、マスコミが言わない隣国の支配戦略』(幻冬舎新書)などがある。
加谷珪一公式サイト

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