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セブン、元旦休業拡大か…「人件費等はすべて店舗負担、本部は利益の6割吸い上げ」

文=深笛義也/ライター
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セブン-イレブンの店舗

 元旦は休業する。そう宣言したのが、セブン-イレブン東大阪南上小阪店の松本実敏オーナーだ。その呼びかけに応じて、元旦休業を行おうとしているセブン店舗も増えているという。なぜ元旦休業するのか。松本オーナーは言う。

「命の問題です。24時間365日営業していなくちゃいけないというなかで、従業員が足りないことでオーナーにしわ寄せが行って、自殺や過労死も出てます。コンビニに休みがあるいうんはすごい画期的なこと。これが当たり前になれば、20年以上休んどらんというオーナーも1日だけでも休むことができるでしょう」

 松本さんは、人手不足から2019年2月から24時間営業をやめ、午前6時から翌午前1時までの19時間営業に切り替えた。当初、セブン本部は「24時間営業がブランド」だとして契約解除を突きつけたが、松本さんは深夜休業を続けた。世論の後押しもあり、セブン本部は11月1日にフランチャイズ加盟店向けに配布したガイドラインで、午後11時から翌日午前7時までの最大8時間の深夜休業を認めるとした。

 商品の搬入が深夜に行われるシステムになっているから、深夜も店を開けていなければならないという説明が当時マスメディアでも聞かれた。だが、松本さんの店舗では、深夜休業しても営業が続けられている。

「当初は店の出入り口を鍵で開閉してたんやけど、指紋認証を導入しました。メーカーの納品担当の人の指紋を登録しといて、その人が指を入れただけで開くようになったんです。深夜に納品だけしといてもろうて、私が朝来てそれを検品して商品を出します。本部のなかでもいろいろで、商品部とかいろんな部が、時短に対してそういう協力をしてくれました。納品に関して今、まったく問題はないです。令和の時代の新しいコンビニの形態が、できあがりつつあるんかなと思うてます」

 セブン本部からのフランチャイズ加盟店向けのガイドラインには、深夜休業を認める一方で、正月やお盆を例に挙げて「利用客や配送業者に混乱を招くため特定の時期の休業は認めない」として、365日の営業を続けるよう明記されている。

 これに対して元旦休業を宣言した松本オーナーだが、セブン本部からの反応はあったのだろうか。

「なんもないです。『元旦休むからね』って本部にも伝えたんですけど、『うーん、わかりました』って唸ってたけど、なんも言ってこない。元旦閉めてから、契約解除の通知よこしたろとか思ってるのかもしれませんけどね」

全店深夜休業なら一晩で本部の取り分1億円減

 コンビニではローソンが、2020年元旦の休業を実験的に行うと発表している。スーパーマーケットや外食チェーンでも、元旦休業の動きが広がっている。なぜ、セブンは元旦営業にこだわるのか。

「休まれると、自分たちの取り分が減るからでしょう。それしか考えてないんですよ、あの人たちは。深夜休業にしても5時間休んだだけで、2万店全部がしたら一晩で1億円、本部の取り分が減る言うてますから。だから本当は深夜休業も認めたくないんやけど、世間がこんだけ騒いどるから仕方ないから認めましょうってことなんでしょう。元旦1日全店が休んだら、本部の取り分は10億円くらい減りますよ。だから休ませたくないんでしょうね。だけど、正月なんて誰も出て来たくない。時給を50円とか100円とかアップしないと、出て来てもらえんでしょう。私らとしては、元旦にやること自体がマイナス覚悟でやっているような感じなんです」

 コンビニ他社や他業種の元旦休業の動きを見ると、人件費がかさむ割には売上が上がるわけではない、それなら元旦休んでもらって従業員のモチベーションを上げたほうがいいという考えがあるようだ。

「それ、普通の考えですよね。だけどセブンのフランチャイズの場合、人件費とかを全部オーナーに負担させといて、粗利の中からロイヤリティを60%引いていくわけだから、オーナーが疲弊していようとおかまいなしなんですよ」

 松本オーナーが踏み切った深夜休業によって、指紋認証による納品というシステムまででき、セブンは進化していると言える。元旦休業による展望はどうなのだろうか。

「まず一番だったのは、時短だったんです。そのことによって、命を削られているような人が救われるやろうと。まだそれでも休みなく十何時間とか働いているような人もいるんで、次は休業ですよね。どっかで休めたらそれだけでも大分違う。時短や休日は、オーナーが自由に決められるような契約書にするべきだと思ってます。

 それができたら、次はロイヤリティですね。今のままでは、とうてい続けていけない。今、本部と店で6対4くらいですけど、せめて5対5くらいにしたらなんとかやってけるということがあります。とりあえずは、時短と休業。それができれば、なんとか命は守れるかなと思うんで、それを進めていきたいなと思ってるんです」

本部「契約書に則った対応」

 元旦休業に関する見解を、セブン本部広報から聞いた。

「私どもフランチャイズ契約の上でのフランチャイズと本部の関係にございますので、大前提の加盟店基本契約というものが存在しているんですけど、そこに年中無休で少なくとも7時から11時までは開店しましょう、という下りがあります。よって深夜休業についてはこの範囲ではありませんので、先日もガイドラインを発表させていただいたなかで加盟店様のご判断で深夜休業していただいていますというような状況でございます。よって何かに固執してるとかそういうことではなくて、契約書に則った対応ということでご理解いただければと思います」

 コンビニ他社やスーパーマーケット、外食チェーンの元旦休業の動きと比べると、セブンは年中無休に固執しているようにみえるのだが、どうなのだろうか。

「スーパーさんとかすべてレギュラーチェーンさんですから、お店も自社だということはご理解いただけますよね。私どもフランチャイズということで、固執しているわけでは決してないですが、この基本契約、契約ビジネスのなかで運営をしていくというのが基本だということはご理解いただけると思います。よって元旦も深夜休業はしていただくことはできますし、ガイドラインに則った形でということで加盟店にはお話をしています」

 当初、契約違反だとされた深夜休業は、松本オーナーの実践を皮切りに、11月1日のガイドラインで認められた。

「ガイドラインができたのは変化だとは思っています。ただ基本契約の午前7時から11時までは開店するというのは契約としてずっとあるものでございます。そこにガイドラインを設けて24時間やっている加盟店様が深夜休業を考えられている時に、いろんな準備が必要でございますので、取り込みやすいように、そういうところは変化かなと考えております」

 コンビニの先駆者であるセブンが、働き方改革の時代にも最先端を走っていくと願いたい。

深笛義也/ライター

深笛義也/ライター

1959年東京生まれ。横浜市内で育つ。10代後半から20代後半まで、現地に居住するなどして、成田空港反対闘争を支援。30代からライターになる。ノンフィクションも多数執筆している。

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