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地方の国公立大学も存亡の危機…激変する全国大学教育

構成=長井雄一朗/ライター
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――国立大は経営統合の動きも活発化していますね。

木村 19年5月に、1法人が複数の大学を運営する「アンブレラ方式」を可能とする改正国立大学法人法が施行されました。すでに、名古屋大学と岐阜大学は東海国立大学機構を設立して法人統合することで基本合意しています。奈良女子大学と奈良教育大学も法人統合で21年10月を目標に、新たに国立大学法人奈良カレッジを設立することで合意しました。さらに、帯広畜産大学と小樽商科大学と北見工業大学が統合、静岡大学と浜松医科大学が統合と、国立大学の再編が続いています。複数の大学がそれぞれの伝統と個性を生かして存立するには、アンブレラ方式が有利と判断したのでしょう。

 アンブレラ方式による統合は文科省の意向もあるのでしょうが、一方で財務省は評価の高い大学に経営資源を集中させたいと考えていると思います。財務省は「日本はヨーロッパと比較して国立大の予算や教員が多い」などと、地方の国立大を批判する内容の論文を発表しているほどです。おそらく、財務省は各都道府県すべてに国立大法人は不要だと考えているのでしょう。

 しかし、地方は国立大がなければ確実に衰退してしまいます。地方創生を真剣に考えるならば、大学経営資源は全国に分配すべきです。東京大学や京都大学などは企業からの寄付金も多く財務的に豊かですが、地方の国立大ではそうはいきません。地方の国立大は、「競争と集中」の美名のもとに権限と予算が削られているのが実情です。むしろ、地方国立大学からノーベル賞級の研究を生むような政策が必要でしょう。

千葉大、15年ぶりに授業料値上げ

――国立大の改革例としては、どんなケースがありますか。

木村 九州大学は18年3月に、50年ぶりの新学部「共創学部」を創設しました。課題発見から解決に導くために必要な態度・能力を分類し、「共創的課題解決力」の獲得を目指すとのことです。島根大学は19年度から、夏休みの間に「フレックスターム」という4週間の集中期間を設けています。あくまで強制ではなく学生の自主性に任せるかたちですが、長期のインターンシップ、海外留学、ボランティアなどにじっくり取り組むための制度です。

 16年4月に国立大初の「国際教養学部」を創設した千葉大学は、20年4月から15年ぶりに授業料を値上げします。これは、全学生に留学体験を提供する制度の導入に伴うものです。

 地方の国立大は東大のような“総合百貨店”ではなく、高度な“専門店”となることで生き残りを図っているように思います。今後は、大学の経営改革と地域活性化の活動がリンクすることで、大学と地方がともに飛躍することを期待しています。

(構成=長井雄一朗/ライター)

長井雄一朗/ライター

長井雄一朗/ライター

建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス関係で執筆中。

Twitter:@asianotabito

『「地方国立大学」の時代 2020年に何が起こるのか』 平成に大きく変わった国立大学。少子化の影響に加え、2020年には入試改革を控えるなど、この先さらに激変が起こるのは間違いない。そこで教育ジャーナリストがここまでの歩みと最新状況を整理。特に「地方」から「世界」の大学になるべく広島大学が進める改革を追い、その未来を提言する。データが教える各校の「真の実力」とは? 大学は高校生の夢をどこまで叶えられる? 地方消滅目前、日本の危機を地方国立大学が救う! amazon_associate_logo.jpg

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