宝塚とドラッグのキケンな関係…『ラストエンペラー』から『るろうに剣心』までの画像1
アヘン戦争の様子(Getty Imagesより)

 師走のあわただしいこの時期。2019年を振り返ると、今年もさまざまなニュースが駆け巡った。なかでも注目を浴びた話題のひとつが、薬物問題だろう。3月にコカイン使用の容疑で逮捕され、その後有罪判決を受けたピエール瀧にはじまり、元KAT-TUNの田口淳之介、田代まさし、そして沢尻エリカなどと続いた。過去には酒井法子、ASKA、清原和博など、薬物問題で逮捕された有名人は枚挙にいとまがない。

 私がひいきにしている宝塚歌劇団においては、劇団員の方々の薬物問題は幸いなことに耳にしたことがない。しかし、宝塚の舞台においては、薬物はテーマのひとつとしてちらほら取り上げられていることもあるようだ。

 清く正しく美しい宝塚の舞台に薬物とはかなりそぐわない感もあるが、そこはうまいこと“夢の世界”に乗せてくるのが宝塚。とはいえ、その扱われ方に注目してみると、年代を経るとともにそれ相応の“変化”があるようである。

宝塚のロマンティシズムとアヘン

 古いところからいくと、まずは1991年に星組で上演された『VISAシアター 宝塚グランド・ロマン 紫禁城の落日』がある。当時のトップスターコンビ・日向薫と毬藻えりの退団公演であり、映画『ラストエンペラー』で有名な清の最後の皇帝、愛新覚羅溥儀を取り上げた作品であった。

 物語の終盤では、毬藻演じる溥儀の正妻・婉容がアヘンにおぼれ、アヘン中毒になる。婉容は憧れ続けたイギリス・ロンドンを思い、「ロンドン・デリーの歌」を歌いながら夫・溥儀の腕の中で死んでいく。ミュージカルなどでもよく見かける、とても美しいいちシーンが繰り広げられるのだ。

 次に思い出されるのが、1996年に雪組で上演された『宝塚ミュージカルロマン 虹のナターシャ』。マンガ雑誌「mimi」(講談社、現在は休刊)に連載された、小説家・林真理子先生原作、マンガ家・大和和紀先生作画による同名マンガを原作とした作品である。

 当時のトップスター・高嶺ふぶきのトップお披露目公演であり、昭和初期の上海と東京を舞台にした、混血のプリマドンナ・ナターシャをめぐる物語である。タイトルロールにもなっているナターシャを演じたのが、今でも東宝ミュージカルの主役級で活躍している花總まり(当時は、一路真輝の相手役に引き続きトップ娘役続行中)。そのナターシャが、高嶺演じる三条薫に対して、上海のアヘン患者が集まる場所を「あそこはアヘン窟だぜ……」と警告するシーンがある。実際にアヘン窟の様子が舞台上で明らかにされることはないものの、アヘンが危険なものであるとのメッセージが伝わる場面であった。

『るろうに剣心』で描かれるアヘン患者の精神異常

 そして2016年、雪組にて上演された『浪漫活劇 るろうに剣心』は記憶に新しいところ。ここにもまたアヘンが出てくる。舞台は明治初期の東京。悪徳実業家である武田観柳(彩凪翔)に捕らえられた女医・高荷恵(大湖せしる)が、監禁下でアヘンを作らされ、そのことによりアヘン患者が発生し、恵は良心の呵責に苦しむ。宝塚において初めてミュージカル化された『るろうに剣心』(集英社)だが、実際にアヘン患者が拘束され、精神異常をきたすシーンがあるのである。

 暗い舞台で宝塚らしからぬ、おどろおどろしい歌と踊りで表現するアヘンの恐ろしさ……。宝塚において、薬物によって精神異常をきたすといったような場面を見る日が来ようとは、である。しかも、原作である和月伸宏先生のマンガでは、そのようなおどろおどろしいシーンは描かれていなかったはずなのに。

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『浪漫活劇 るろうに剣心』
1994年に「週刊少年ジャンプ」(集英社)にて連載開始された人気マンガ『るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-』が原作のミュージカル。維新期の伝説の人斬りだったが明治の世では「不殺」を誓う緋村剣心を早霧せいなが、剣心を慕う神谷薫を咲妃みゆが好演した。またこのミュージカルは、男性俳優も出演するいわゆる「普通の」ミュージカルとして2018年に新橋演舞場で再演され、退団後に女優となった早霧が再び剣心を「男役として」演じたことでも話題になった。写真は同作のパンフレット表紙。
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