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森友・籠池夫妻に不当判決…検察が勝手にストーリー創作、村木厚子氏・証拠捏造事件と同じ

文=青木泰/環境ジャーナリスト
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判決後、いつものツーショットではなく、一人で大阪地方裁判所の南門で囲み取材を受ける籠池諄子氏(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 森友学園の詐欺、詐欺未遂事件は2月19日、大阪地裁で異例の弁論再開に入った。昨年10月30日に一度は結審していたが、予定されていた判決の前に、検察側が論告求刑への説明を行い、弁護側が反論して午前中に結審し、判決に入った。判決では、主文で被告人の森友学園前理事長、籠池泰典氏を懲役5年、妻の諄子氏を懲役3年・執行猶予5年とした。諄子氏は大阪府・市の補助金詐欺については無罪となった。泰典氏は公判後、そのまま大阪拘置所に拘置され、予定されていた囲み記者会見は、泰典氏に代わって諄子氏が一人で行うことになった。会見には、保釈資金を提供(貸し付け)した「青汁王子」として知られる三崎優太氏も参加し、有罪判決の後とは思えない明るい記者会見となった。

 ・「スタンダップTV」参照

 刑事訴訟の判決は、求刑に対して7掛けが相場といわれている。泰典氏への判決は、求刑懲役7年に対して「7×7=4.9」で懲役5年は予想通りだが、諄子氏の執行猶予付き懲役3年、そして大阪府・市関連の罪状について無罪というのは意外な展開だという。泰典氏が公判を通して諄子氏の無罪を一貫して主張してきたことに加え、日本は夫婦同罪とする野蛮国だという批判や、検察の論告求刑の誤りを追及する市民の声などが、この「相場」を打ち破る力となったのであろう。

 大阪拘置所に収容された泰典氏は、その日のうちに保釈される予定が翌日となり、大阪地裁が保釈を決定した後に大阪高検が異議を申し立て、大阪高裁の判断に委ねられ、結局収容は3日間に及んだ。保釈されたのは21日の20時になった。検察は市民から「有罪の犯人をすぐ保釈するのか」というお叱りの電話が相次いでいたためだと説明していたようだが、保釈直後の記者会見で籠池氏が判決の不当性を堂々と主張することを避けたかったのだろう。

 メディア対策は、権力にとっても国民にとっても重要となっている。

天真爛漫、諄子さん劇場

 会見で諄子氏は約50人の取材陣に取り囲まれ、以下のように語り、まったく型破りな会見となった。

「主人は立派だなと思いました」

「行ってらっしゃい」

――ご自身の判決についてどう受け止めていますか?

「神様にお任せしています」

「この不当な裁判に納得できません」

「サステナブル(補助金受給)を主導したのは主人というのは酷すぎます」

「今、護送車で連れられて行きました」

――判決言い渡しの時に手をつないだのは?

「手を握ったのは、300日の勾留でしもやけになったお父さんの手を温めたかっただけです」

 聞かれていることに答えるだけでなく、三崎氏の姿を見つけると、「青汁王子さん来てください」と自分の隣での発言を促し、「保釈金を貸してくれました」と紹介した。いつの間にか会見を仕切っている。

 この日の裁判中も、弁論再開の議論が進むなかで、諄子氏は急に抑えきれなくなって嗚咽し泣き出してしまう。そのために公判は途中でストップし、休憩時間を取ることになった。この休憩時間のなかで被告と弁護士が話した内容には、裁判の行方を左右する重要な点が含まれていた。

 裁判所は1月29日付けの弁護側の弁論再開要求を受けて、検察側に証拠取り調べを促し、検察は2月14日付けで「捜査報告書(その1)」を弁護側に提出していた。その捜査報告書のなかで(※1)、検察は論告求刑では否定していた、森友学園による大阪府・市へ補助金を弁済していた事実を認めていた。つまり、検察の論告求刑には虚偽の事実が書かれていたという検察の大失態が明らかになった。そして検察は「捜査報告書(その2)」も作成していた。

 判決の直前、2月17日から3者会談(裁判所、検察、籠池氏の弁護人)で弁論再開について話し合われたが、結局その捜査報告書を検察は裁判所に提出せず、捜査報告書に書かれた事実を基に論議になることを避けた。3者会談が検察のペースで進められたことへの諄子氏の憤りが、先の嗚咽となって表れた。

 判決後の会見に話を戻す。

――お二人で何を話し合われましたか?

「絶対がんばろう、絶対負けられないと話しました」

「公文書改ざん、38名不起訴にして、私たちを刑事事件で処罰するのはおかしいです」

――安倍首相夫人の昭恵さんについて。

「卑怯です、嫌いです」

――自分の判決については?

「神様にお任せしています」

「私は、5年間普通に生活すれば、いいという判決だった」

――では控訴しないということですか。

「お父さんと考えたいと思います」

 そして、三崎氏は次のように語った。

「この事件の根深い問題は、上級国民はなぜ刑事の罰に問われていないのか。片や一般国民の籠池さんは、罪に問われています」

「彼らが罪に問われないのならば、籠池さんも罪に問うことはできない」

「キアラ設計が、内緒でとっていた録音記録を物的証拠として出しているのはどうかと思う」

「財務省との関係の話を、サステナブル補助金の話としてすり替えている」

検察官が作成した2通の捜査報告書

 今回の弁論再開は、検察が論告求刑の結びに「大阪府・市の補助金分は(籠池氏から)弁済なされていない」、「酌むべき」情状はないと記載していたが、籠池泰典氏は今年になって、森友学園現理事長で娘の町浪氏との会話の中で、弁済されていた事実に気づき、裁判官に資料を提示し訴えたのが始まりである。泰典氏は昨年末まで、勾留中の接見禁止や保釈後の家族との接触禁止で、気付く機会がなかった。

 籠池氏の弁護団の話によれば、2月19日の公判で裁判官は、弁護側が提出した書証を「被害額が客観的に一部弁済されている証拠」として受け止め、職権で採用して法廷での取り調べに入った。しかし、弁論再開された法廷では、検察は論告求刑の訂正や籠池夫妻への懲役7年の求刑取り消しは行わなかった。わずかな金額が返済されても国と大阪府・市が被った約1億7000万円の被害額は変わらないとして、まるで論告求刑に間違いはなかったかのように対応した。これに対して弁護側は、まったく論理をすり替えていると批判した。

 判決要旨には、そうした検察官の対応を見抜くように次のように書かれていた。

森友学園が、過去に交付を受けた補助金等の返還債務等につき、一部の免除を受けた後に、府に対して60万円を、市に対して32万4752円をそれぞれ弁済し、さらにその残額を再生計画に基づいて、弁済することが見込まれる点は、酌むべき事情として認められる」

 これは検察の論告求刑とは180度異なった見解であり、このように論告求刑の訂正は裁判官の手によって行われた。

 前述のとおり検察は2通の「捜査報告書」を作成していた。驚くのは、それぞれ被害総額が異なっていた点に加え、提出の方法が通常とは異なっていた点だ。「捜査報告書(その2)」は18日の夜に弁護士事務所のポストに投げ入れられ、弁護側がそれを入手したのは判決が出される19日当日の朝であり、内容を確かめる術はなかった。検察は「捜査報告書(その1)」を証拠として提出する旨を弁護側が認めなければ、弁護側が1月29日に提出した弁論再開書も証拠として認めないと主張し、これらの「捜査報告書」が公判で議論されることに蓋をしてしまった。

 本来、裁判所で審議しなければならなかったのは、検察が論告求刑に虚偽の事実を書いた動機はなんだったのかという点である。検察が上記の対応を籠池夫妻を重罪に落とし込むために行ったとすれば、不当な捜査対応といえ、単なる失態で済ますことはできない。いずれにせよ一審判決が出た以上、今回の弁論再開で問題となった論点は、控訴審での論議へと引き継がれていくことになる。

外堀を埋め尽くされたなかでの有罪判決

 21日夜に大阪拘置所から保釈された泰典氏は、自身も無罪であり控訴して闘うと発表し、諄子氏の控訴は熟慮すると発表した。判決を見ると、国のサステナブル補助金については籠池夫妻が主犯であり、夫婦同罪だとされている。同補助金申請の約1カ月前の2015年6月10日、キアラ建築研究機関の担当者に「ぼったくってこい」と言った諄子氏の発言(録音機に記録)が実質根拠となっている。

 しかしその一言は、同補助金申請とは別件で諄子氏がキアラ担当者とは別の人物に話しかけたものだった。当時、森友学園が土地を借りていた近畿財務局から示された年2700万円の借地料が高いことに怒った時の一言である。検察は都合よくストーリーを立てており、厚労省元局長の村木厚子氏の冤罪事件とまったく同じ構造である。

 同補助金詐取を主導したのは籠池夫妻なのか、それとも校舎を設計し補助金を申請したキアラなのか、建設工事を行った藤原工業なのかという点についても、判決は施主である籠池夫妻が主導したとしている。検察は最初から籠池夫妻にターゲットを絞り、起訴状では共謀者としてキアラと藤原工業を訴えつつも、両事業者については家宅捜査も逮捕もせず、籠池夫妻が有罪だという証言と引き換えのように、免罪する司法取引が行われている。司法取引制度が発効した2018年より1年前の本件に適用するのは不法であるという点も無視されてしまった。

 その上、検察は国のサステナブル補助金の詐取金額や、大阪府・市からの補助金の詐取金額も間違え、計算のやり直しを繰り返していた。恐ろしいまでの検察の劣化であり、判決はその点も見逃してしまった。

 今回の判決要旨は、検察の主張をなぞるだけになった。検察が夫婦を逮捕し300日も勾留した人質司法によって、裁判前にもかかわらず実質的に検察の判断で懲役刑を執行したかたちとなった。裁判公判のなかで検察側の主張にさまざまな矛盾点が見つかったが、巨大な検察機構が存在するなかで、裁判官個人がどのように対処できるのか。今回は諄子氏の執行猶予付きという判決が、野口卓志裁判長にとっては精一杯の独自の判断だったのではないだろうか。もともと首相反逆罪の装いで進められた籠池夫妻の刑事裁判、控訴審の行方が見逃せない。

(文=青木泰/環境ジャーナリスト)

※1:捜査報告書を受けて籠池夫妻が裁判所に提出した「捜査報告書(令和2年2月14日)を検討した結果の概観と詳細な検討時間を請求するお願い書」より

青木泰/環境ジャーナリスト

青木泰/環境ジャーナリスト

元大手時計メーカー研究所勤務。中途退職後、中小企業の技術顧問をしながら、「廃棄物の焼却処理による大気汚染等の環境影響」や「資源リサイクル問題」等をテーマに著作や市民活動を重ねる。3.11後、汚染がれきの広域化問題の講演会や学習会で全国約100箇所講演。「被災避難者支援」や「ごみ問題」で国会議員にも情報提供。廃棄物資源循環学会会員。環境行政改革フォーラム(青山貞一主宰)会員。NPOごみ問題5市連絡会理事長。

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