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朝日新聞編集委員、入境禁止の台湾に入境→「隔離日記」連載…台湾内で物議醸す

文=編集部
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外国からの入境が禁止された19日の台北市内(The New York Times/Redux/アフロ)

 朝日新聞アジア総局(タイ・バンコク)の吉岡桂子編集委員が3月19日から、Facebook(FB)のアカウント「The Asahi Shimbun Asia & Pacific 朝日新聞アジア太平洋」で公開を始めた『台湾「隔離」日記』が物議を醸している。

 新型コロナウイルス感染症の拡大防止策として、台湾政府は19日午前0時から、外国人の入境を原則的に禁止する措置を開始。居留証や外交・公務証明書、ビジネス履行証明などの特別な許可がない場合、すべての外国人が台湾に入境できなくなった。ところが、吉岡編集委員はこの前日の18日に急遽入境。隔離生活を送りながら検疫を待つ日々を徒然に綴り始めたのだが、その取材スタイルと記事の内容に国内外から疑問の声が寄せられている。

どこか浮世離れした隔離日記

 吉岡編集委員はホテルでの隔離生活を、どこか浮世離れしたほんわかムードで綴っている。

「私はこの原稿を、台湾のビジネスホテルの部屋で小さな冷蔵庫を机にして書いています。1日目の朝はタピオカの入っていないミルクティーで始まりました」(原文ママ、以下同)

「このホテルは、空港で担当官から紹介されました。ペットボトル(600㎖)26本、3食つき。食事は定時にエレベーターホールに置かれるので、マスクをして取りに行きます。タオルやトイレットペーパーなど衛生品も普通のホテルとして備わっています。一日あたり1万円弱。午後4時半ごろには、桃園市から大きな桃色の袋がプレゼントとして届き、びっくり。中には、マスク14枚のほか、この措置の手引きとおかしや栄養食品などがたくさん入っていました」

 台湾の入境制限が発表され、突発的に取材に行くことを決めたことにも触れている。

「いつ解除になるかもわかりません。18日はビザ免除の恩恵があるはずの最後の1日。この日を逃すとドアはいつ開くか、わからない。到着後に14日間『隔離』されるとしても」

 また現地到着後、隔離先の滞在場所(ホテルなど)を自身で手配する必要性が発覚し、次のように戸惑う様子が描かれている。

「『在宅検疫及び隔離にかんするサービスセンター』の一覧表です。台北など該当する宿泊施設『防疫旅館』がある22の自治体の名前と電話番号が書いてあります。『金門島もあるのですか?』と言うと、『あなたは公共交通機関は乗れません。島は無理です。その前提で電話をかけて探してください』とアドバイスしてくれました。

 そうなると、高速鉄道も使えないから台南は遠すぎる。台北、新北はすでに満室。懐かしい台湾映画『非情城市』の舞台にもなった基隆の再訪も考えましたが、こちらも満室。電話がつながらない街も。だんだん焦ってきました」

 そもそも、なぜこのタイミングで台湾に渡ったのか。その理由に関して日記の『2日目』で次のように説明している。

「今は対象の名前を明かせませんが、事前に申し込んでいた取材が4月に予定されているために台湾へどうしても来たかったのです。『隔離』のためにきたという誤解があるようですが、のちにきちんと取材をした記事を読んでいただければご理解いただけると思います。取材の成果をごらんいただければたいへんうれしいです」

吉岡氏の行動に台湾紙も困惑

 4月に外せない取材があるとのことだが、蔡英文総統など政府高官の取材なのだろうか。今回のコロナウイルス感染症の拡大を受け、マスコミ、政府関係者の間ではインターネットを通じた取材が拡大している。政府関係者であっても今回に限ってはSNSを活用した取材は受け入れているし、Skypeなどを使用したテレビ会議インタビューも一つの手法として普及している。仮に取材相手やその国の雰囲気などを記事の「雑感」に落とし込みたいのなら、同社の台北駐在の記者が現場に行けば良いだけではないだろうか。

 インターネット上では「懸命に防疫に勤める台湾政府に対する冒とくではないのか」などと、吉岡編集委員の取材手法に国内外から疑問の声が上がっている。FB上での賛否を紹介する。

「最悪の行為だ。腹が立ちました!」

「台湾在住の日本人です。取材対象のご本人と対面しての取材は必要だと思いますので否定はしませんが、確か御社は台北に支局をお持ちだと思います。果たして台湾当局の手を煩わせて入国してまでもインタビュアーが必ず吉岡さんでなければならなかったのでしょうか?」

「なかなか脳天気な言動でびっくりしました。これも報道の一環というものでしょうか。支局があるにもかかわらずどうしても吉岡さんでないと取材ができないものはありますでしょうか。お察しください」

「お疲れ様です。台湾在住の台湾人です。吉岡さんの来台、歓迎します。記者っていうのは、もともとこういう時、周囲にある事実を述べる存在です。世界中、武漢肺炎の蔓延で緊張感上昇しつつあるのですが、台湾の人々はそれでもできる限りいつもの日常を運びたいし、仕事をする人達に対して、移動の必要性があれば、別に悪く思っていません。タイワンのメディアとネットに色々中国人が混ざっているので、すべてが台湾現地の人の考えではありません。健康に気をつけて、お仕事を頑張ってください」

 こうしたネット上での論争を踏まえ、台湾4大紙のひとつ自由時報も22日、『武漢肺炎》日記者訪台寫「隔離日記」挨罵:別給台灣添麻煩』と題する記事を公開。吉岡編集委員の行動が台湾、日本両国のネットユーザーを中心に物議を醸していることを報じた。

朝日記者「ああ、また吉岡さんか」

 吉岡編集委員は1964年、岡山県生まれ。岡山大学法学部卒業。山陽放送を経て、1989年に朝日新聞社に入社。和歌山支局、大阪、東京で経済を取材し、旧運輸省を担当。対外経済貿易大学(北京市)で中国語研修を受けた後、長らく中国特派員を務め、17年5月にバンコクに赴任した。

 朝日新聞記者は吉岡編集委員の人となりを次のように語る。

「ああ、また吉岡さんかという感じですね。彼女は本社や国内外の主要ポストに空きがないため最近、増加の一途をたどっている編集委員という“社内有識者”のひとりです。特にバブル崩壊前後に入社した現編集委員は、良い意味でも悪い意味でも浮世離れした人が多いのですが、吉岡さんもどちらかというとその部類です。天真爛漫というか破天荒なところがあり、正直な話、社内の若手は『そろそろ後進に道を譲ってほしいな』と思っているのですが、どうしてもご自身で台湾に行って記事が書きたかったようですね。当人は現地支局に迷惑をかけないように台湾に乗り込んだのかもしれませんが、結果として台北支局もだいぶ振り回されていると社内では噂です。

 吉岡さんは中国がアジア各国に展開している一帯一路政策の検証取材に精力的に取り組んでいて、ラオスなどで現地ルポをし、社内のネット媒体などに記事を掲載しています。スクープを追い続ける報道記者というより、どちらかというとエッセイストや文化人のイメージが強いです。これまでの取材を見ている限り、4月の取材も緊急性のあるものだったのかどうか」

 今回の吉岡編集委員の取材に関し、当サイトは朝日新聞社に『台湾「隔離」日記』が社としての取材なのか、吉岡編集委員個人の取材なのか、また社として今回の取材手法に関してどのような見解を持っているかなどを問い合わせた。同社広報部の回答は以下の通りだった。

「吉岡桂子編集委員は4月に予定していた取材のために台湾に入りましたが、台湾当局の新型コロナウイルス対策の一環で自身がホテルに『隔離』されている状況を『台湾隔離日記』としてフェイスブックに投稿しました。台湾入りについては台湾の正式な手続きを順守して入っています。取材相手との接触はございません。

 常時マスクを着用し、台湾に到着した直後から当局の指示に従い行動しました。空港やホテルでも人との距離を十分に取るなど安全確保に努めました。

 新型コロナウイルスの防疫対策に台湾当局が懸命に取り組んでいるなか、不自由な生活を耐えている台湾の方々や在留邦人の方々への配慮に欠けた表現がありました。不快な思いをされたみなさまにご迷惑をおかけしたことをお詫び申し上げます。『日記』の投稿は20日のものをもって終了します」

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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