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篠崎靖男「世界を渡り歩いた指揮者の目」

クラシックコンサート、最大の魅力は“臨場感”だ!独特な緊張や恐怖が感動を生む!

文=篠崎靖男/指揮者
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「小曽根真オフィシャルサイト」より

 ジャズピアニストの小曽根真さんが4月9日から毎晩、自宅のリビングルームにあるピアノの前から、Facebookを通じてライブ演奏を配信していらっしゃいます。毎回、約3000人のリスナーが、それぞれの自宅のリビングや寝室で、小曽根さんの素晴らしいジャズピアノを楽しんでいるのです。小曽根さんは、最後に「Stay Home!また会いましょう」とおっしゃって、その晩の演奏を終えるのが定番になっています。

 小曽根さんは1983年にアメリカの名門バークリー音楽大学ジャズ科を首席で卒業後、米大手レコード会社CBSと日本人初の専属契約を結び、今もなおジャズの最前線で活躍されているピアニストです。僕も大学生時代に、東京・表参道の骨董通りにあるブルーノート東京で初めて聴いて、その素晴らしさに感動したひとりです。そんな小曽根さんの演奏を毎晩聴けるなんて、とても贅沢な時間です。そして彼の強い思い、人々に対する深い愛情に感動します。

 今、世界最高峰のオーケストラ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を始め、世界中のさまざまなオーケストラや歌劇場が動画を無料公開しており、音楽ファンの耳と心を喜ばせていますが、やはりオーケストラやオペラは人が集まって演奏する必要があるので、実際には過去に演奏してきた録画を配信することとなります。もちろん、それでも極上の演奏なのですが、ひとりでピアノ演奏をする小曽根さんのライブ配信は、まさしくその時に彼が演奏しているだけでなく、その中で交わされる奥様との気楽な会話も含め、臨場感がまったく違うことに気が付きました。

 現在、世界中の音楽家が自由に演奏できず、観客もコンサートに行きづらい時間ではありますが、あらためてライブコンサートの魅力の理由がわかる機会になりました。それは、演奏家が目の前で演奏をしているという臨場感にほかなりません。

 スポーツに置き換えてみましょう。たとえば昨年、大きな話題になったラグビーワールドカップで、僕は幸運なことに、ほとんどの日本戦のテレビ放映をライブで見ることができました。どうしても見られないときは録画をし、ネットニュースで結果を見ないように気をつけながら帰宅して録画を見てみていましたが、ライブ放送で見るときのような大興奮がないことに気付きました。

 試合経過や結果を知らずにテレビ画面を見ているのですが、心のどこかに「もう結果は出ている」という意識があるのだと思いました。そう考えてみれば、スタジアムに行って、実際に試合を見ている観客の臨場感も相まった興奮は、倍どころではないでしょう。

オーケストラ、コンサートでしか得られない特別な感動

 それは、同じく集団プレイであるオーケストラにもいえることなのです。オーケストラが、数日間にわたるリハーサルをしっかりと行い、十分に準備を終えて本番を迎えたとします。しかし、実際に本番でどういった演奏になるのか、指揮者の僕にもわからないのです。ラグビーの試合前と同じように、「結果」が出ていないのがライブコンサートの臨場感なのです。そして本番ともなると、すべての奏者が全身全霊を込めて演奏をするだけでなく、独特な緊張感が集中力を高めるので、リハーサルでは出なかった魔法がかったようなサウンドが連続したり、管楽器奏者が素晴らしいソロを演奏したりすると、オーケストラは集団心理が働くのか、本番ならではのとてつもなく素晴らしい演奏をすることがあります。

 ラグビーでも、今まで練習でもできなかったようなナイスプレーが出ると、チーム全体が盛り上がります。そのような時、解説者は「今、チームに流れが来ている」と言いますが、オーケストラも同じです。長年、同じオーケストラと演奏を重ねていても、「今晩のコンサートは特別だった」と、楽員と感動を分かち合うようなことがあるのです。聴衆にとっても同じでしょう。毎回聴きに通っている地元オーケストラのコンサートが、今まで聴いたことのない素敵なサウンドを出した時の新鮮な驚きは、ライブで得られる共感も加わって特別な感動に結びついていきます。

 しかし、人間が演奏するのですから、時には失敗をしてしまうこともあります。これもスポーツと同じく、一度起こしてしまった失敗はやり直しができず、観客や同僚の耳にしっかりと記憶されてしまいます。そんな緊張感や恐怖感のようなものが強く支配している時間がコンサートなのです。リハーサルでは一度も間違えなかった奏者が、本番になって間違えてしまうこともよく起こります。

 特に、曲が始まってすぐにミスが起こった場合は厄介です。学生オーケストラのように経験が少ないオーケストラの場合、最初のひとりのミスが全体に恐怖感を広げ、「僕も失敗したらどうしよう」と、次に大事なソロを演奏する楽員も恐ろしくなってしまい、変に力が入ってさらに次のミスを誘発してしまうこともあります。ミスが連鎖しなくても、オーケストラ全体が委縮して、実力を発揮できなくなってしまうことも珍しくありません。

 そのため僕は指揮者として、最初の5分間が無事に進んでくれたら一安心します。楽員のミスばかりは指揮に関係なく“起こる時は起こる”ものですが、ある程度曲が進んでからのミスは集団心理に強く影響を与えないのか、その後のミスを誘発しないためです。

 野球で、ピッチャーが1回の先頭バッター相手にフォアボールを出すのと、3回の先頭バッターにフォアボールを出すのでは、チームメイトの雰囲気が全然違うということと同じかもしれません。

 さて、今晩はぜひご自宅で、お好きな音楽や若い時代にはまった音楽を聴いてみてください。小曽根さんのライブ配信はもちろんですが、クラシック音楽はお薦めです。
(文=篠崎靖男/指揮者)

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

篠﨑靖男/指揮者、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師

 桐朋学園大学卒業。1993年ペドロッティ国際指揮者コンクール最高位。ウィーン国立音楽大学で研鑽を積み、2000年シベリウス国際指揮者コンクールで第2位を受賞し、ヘルシンキ・フィルを指揮してヨーロッパにデビュー。 2001年より2004年までロサンゼルス・フィルの副指揮者を務めた後ロンドンに本拠を移し、ロンドン・フィル、BBCフィル、フランクフルト放送響、ボーンマス響、フィンランド放送響、スウェーデン放送響、ドイツ・マグデブルク・フィル、南アフリカ共和国のKZNフィル、ヨハネスブルグ・フィル、ケープタウン・フィルなど、日本国内はもとより各国の主要オーケストラを指揮。2007年から2014年7月に勇退するまで7年半、フィンランド・キュミ・シンフォニエッタの芸術監督・首席指揮者としてオーケストラの目覚しい発展を支え、2014年9月から2018年3月まで静岡響のミュージック・アドバイザーと常任指揮者を務めるなど、国内外で活躍を続けている。現在、桐朋学園大学音楽学部非常勤講師(指揮専攻)として後進の指導に当たっている。エガミ・アートオフィス所属

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