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松岡久蔵「空気を読んでる場合じゃない」

小池百合子氏、水俣病とアスベスト被害者へ“冷酷な裏切り”…平気で嘘をつく政治家の本性

文=松岡久蔵/ジャーナリスト
小池百合子氏、水俣病とアスベスト被害者へ“冷酷な裏切り”…平気で嘘をつく政治家の本性の画像1
「小池百合子フィシャルサイト」より

 再出馬を表明した小池百合子東京都知事。学歴詐称疑惑に対抗してカイロ大学の卒業証書の原本を公表するなど話題を呼んでいる。小池氏は小泉純一郎内閣での環境相時代(2003年9月~06年9月)のノーネクタイのビジネススタイル「クールビズ」をほぼ唯一の政治的実績とし、代名詞としてきた。ただ、この時期に公害被害者に非常な仕打ちをとり、ウソをついてきた事実は、7月の投開票日の前にもっと知られていい。

 彼女が環境相時代は、大型公害事案への対応が焦点となっていた。まず、水俣病だ。熊本県と鹿児島県から関西に移り住んだ後、水俣病を発症した患者が国と熊本県の責任を問い、損害賠償と謝罪を求めて起こした集団訴訟の最高裁判決が2004年に出た。環境省を訪れた原告団に対し、小池氏は官僚のペーパーを感情をまったく込めずに淡々と読み上げ、わずか5分で会見を終了し大きな反発を買った。

 最高裁判決は「水俣病の認定基準を見直す」ことが趣旨だったにもかかわらず、国会で「判断条件を見直す必要がある、このようには考えておりません」と答弁し、政府に対する不信感を著しく高めた。この判例が他の訴訟にまで拡大し、賠償が増えることを防ぎたい官邸と霞ヶ関に小池氏が忖度したわけだ。いうまでもなく、水俣病は日本が引き起こした世界的公害であり、原告が長い苦しみに耐え勝訴した後でさえも国の責任を逃れに荷担するとは、非情の一言に尽きる。

小池氏が多用する「崖から飛び降りる」

 さらに、アスベスト(石綿)。05年に大手機械メーカー、クボタの尼崎にあった工場の従業員などが中皮腫や肺がんになって死亡し、アスベストが原因と認定された。国に対し、もっと早く規制すべきだったと批判が集まった。それを受け、小池氏は05年11月26日、尼崎のホテルで中皮腫・アスベスト疾患・患者と家族の会と懇談会を開いた。

 その際、夫をアスベストで亡くした古川和子さんが「風は追い風もあるが、向かい風もある、一番怖いのは風が止まることだ、風が止まったら自分で走って風を起こせ、それでも駄目なら崖から飛び降りて風を起こすんだ」と大臣の言葉を引き合いに出し、「大臣、崖から飛び降りて風を起こす覚悟で今日来ていらっしゃいますか?」と質問した。それに対し、小池氏は小さく「ハイ」とうなずき、その後、古川さんらに歩み寄り、「古川さん、飛び降りますからね!」と力強く話したという。

 その後の同年11月29日に国会に提出された「アスベスト新法」の法案は、救済額が労災補償に比べて著しく低い給付水準を設定しているなど、被害者の意を汲んだものとはまったくいえない代物だった。被害者と家族が落胆したのはいうまでもないが、翌06年にこの法案が提出された通常国会の衆議院環境委員会(1月27日)では、舌の根も乾かぬうちから「崖から飛び降りる発言」を否定した。

・田島一成議員(立憲民主党) クローズでの会合でしたから、その会議に参加されていた被害者の会の方の発言を引用させていただくと、別れ際に小池大臣は、がけから飛びおりますからねと言ってくれました、その言葉を信じたいというお話でありました。これは、おっしゃったことは事実ですね。

・小池国務大臣 その発言は、そこにいらした方がおっしゃって、がけから飛びおりる気持ちでやってくださいという御依頼は受けました。私の言葉ではございません。その言葉は別の、選挙の方で使っていたもので、失礼しました。

・田島(一)委員 がけから飛びおりるつもりでやるという、その決意は変わらないです

か。

・小池国務大臣 ですから、私はその言葉は使っておりません。

 被害者の側がわざわざ小池氏についてウソの証言をする理由はなく、小池氏が被害者を裏切る内容の法案を出した手前、自分の発言に身に覚えがないと否定したと考えるのが自然だ。小池氏は12日の再出馬表明の会見でも「崖から飛び降りるつもりでやる」と発言したが、もはやこの言葉に信憑性があるとはとても思えない。

弱者を顧みない政治家

 今回ご紹介したように、小池の政治家としてのキャリアから見て、「その時々で都合のいいウソをつく」ことと、「弱者を顧みない」ことは彼女の本質といっていいだろう。

 都知事選をめぐっては、れいわ新撰組の山本太郎代表が出馬表明するなど動きが出ている。ただ、残念ながら小池都知事の再選は確実視されており、この流れはよほどのことがない限り、変わりそうにない。小池氏は12日の会見で任期中の国政復帰を否定したが、新型コロナの補償問題や東京都の財政再建が今後の課題となるなか、それはウソでないことを信じたい。

(文=松岡久蔵/ジャーナリスト)

松岡久蔵/ジャーナリスト

松岡久蔵/ジャーナリスト

 記者クラブ問題や防衛、航空、自動車などを幅広くカバー。特技は相撲の猫じゃらし。現代ビジネスや⽂春オンライン、東洋経済オンラインなどにも寄稿している。
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Twitter:@kyuzo_matsuoka

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