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さんきゅう倉田「税務調査の与太話」

みずほ銀行と三井住友銀行、なぜ国が提訴?追徴課税を妨げる根抵当権設定、詐害行為に該当か

文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人
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みずほ銀行の店舗(撮影=編集部)

 元国税局職員、さんきゅう倉田です。好きな随筆の書き出しは「春は確定申告。やうやう混んでゆく税務署、少し暗くて、並ぶ人たちたなびきたる」です。

 免税店運営会社「宝田無線電機」の本社ビルなどに、みずほ銀行と三井住友銀行が根抵当権を設定し、国から提訴された。

 宝田無線は国からの消費税の還付金を担保に銀行から融資を受けていたが、処理を担当する国税局は、すぐには消費税の還付はせず税務調査を行った。これを受けて2行は融資を再契約し、根抵当権設定の条項を追加。その後、宝田無線に追徴課税処分が決まると、その当日に根抵当権を登記した。

 国税局は、宝田無線の本社ビルなどを差し押さえたが、国税徴収法の規定では、担保の売却代金は、処分の日以前に抵当権を登記した債権者が優先される。これにより、国税局の徴収金額は7億6000万円から3300万円に減少してしまった。そこで2行の行為が、詐害行為にあたるとして提訴した模様だ。

 宝田無線の税務調査についての報道があったのは、2017年8月。文京区の貴金属関連製品製造会社から金の工芸品を仕入れ、訪日中国人などに売却、1年間で900億円を売り上げたが、消費税の還付申告をしたことで調査を受けていた。

 消費税では、仕向地課税の制度によって、複数の国家による二重課税を防いでいる。平たくいえば、旅行などで日本に来た外国人は、母国に持ち帰って使用するものであれば日本で購入しても消費税が課されない。たとえば、我々が本体価格100万円に消費税10万円を合わせて110万円で購入するものを、彼らは100万円で購入することができる。

 しかし、販売する側は、本来発生するはずの消費税分を受け取ることができない。そこで、消費税の還付制度を用いることで、仕入れ時に払った消費税を国から受け取ることができるようになっている。

 支払った消費税を、確定申告によって戻す制度であるから、還付によって利益が発生するわけではない。しかし、仕入れや売上が仮装であれば、話は別だ。

税務調査で架空の取引が発覚

 東京国税局の税務調査で、宝田無線の2017年2月期の不正が判明。実際に金製品を販売していない、いわゆる、「名義貸し」を行っていたケースが複数あった。書類上は、訪日外国人に販売され国外に出ているはずの製品の大半が、国内での循環取引の材料とされていた。

 宝田無線と循環取引をしていた法人も、約14億円を追徴課税された。宝田無線の納付すべき額は、重加算税を含めて30億円になるとみられていた。当時、宝田無線は代理人を通じて「処分を受けたのは事実だが、会社としてはまったく身に覚えがなく、争います」とコメントし、国税不服審判所に審査請求しているとみられていた。

【今回の流れ】

2016年9月 宝田無線への税務調査開始
2017年3月 2行が融資契約に「消費税の還付額が50億円に満たない場合は、
      宝田無線本社ビルなどに根抵当権を設定する」旨の条件を追加
2017年6月 約104億円を追徴課税。同日、2行が根抵当権を登記。
2017年9月 国税局が本社ビル差し押さえ

 国は、銀行の行為が詐害行為に当たるとして、詐害行為取消請求訴訟を提起した。銀行からすると、80億円以上の還付金があれば50億円の融資に対し十分な担保といえる。しかし、それが無くなれば新たな担保を求めるのは当然だ。宝田無線の不動産を押さえても、売却金額はおよそ11億円で、融資額には届かない。

 財務状況はわからないが、還付金を担保に融資を受けたことや本社ビルを差し押さえられたことから、保有する現金は多くないと推察でき、銀行にとっても厳しい状況といえる。

 また、国が原告に回る例は珍しい。和解になる可能性もあるが、今後の裁判の動向が注目される。
(文=さんきゅう倉田/元国税局職員、お笑い芸人)

●さんきゅう倉田
大学卒業後、国税専門官試験を受けて合格し国税庁職員として東京国税局に入庁。法人税の調査などを行った。退職後、NSC東京校に入学し、現在お笑い芸人として活躍中。2017年12月14日、処女作『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』(総合法令出版)が発売された。

「ぼくの国税局時代の知識と経験、芸人になってからの自己研鑽をこの1冊に詰めました。会社員が社会をサバイバルするために必須の知識のみを厳選。たのしく学べます」

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