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コロナ患者受け入れ病院、経営悪化が限界…診療報酬の特例措置、健保組合が議論すら拒否

文=編集部
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「gettyimages」より

 倒産が頻発する飲食業やホテル・旅館業のような危険水域にこそ達していない。だが、コロナ禍にあって、医療機関の経営は深刻な状況に陥っている。

 7月27日、全国公私病院連盟は声明を発表した。公私病連は、全国自治体病院協議会、全国公立病院連盟、全国厚生農業協同組合連合会、日本赤十字社病院長連盟、全国済生会病院長会、岡山県病院協会、日本私立病院協会の7団体で構成されている。声明の内容は以下である。

新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れている病院や病棟を一部閉鎖した病院の状況はもはや限界まで悪化し、なおかつ新型コロナウイルス感染症の患者を受け入れていない病院においても、その状況は悪化の一途を辿っており、地域医療体制を守る病院の経営は深刻な状況にある」

 病院経営はどれだけ悪化しているのだろうか。公私病連が加盟7団体の会員病院(計1481病院)に対して実施した調査(有効回答率50.2%)によると、医業収入は4月に前年同月比8.9%減、5月に16.0%減だった。要因は外来患者数と手術件数の減少である。

 外来患者延数は4月に前年同月比16.8%減、5月に24.9%減と減少率が拡大した。とくに顕著に減少したのは初診患者数で、4月に37.8%減、5月には42.9%減だった。一方、手術件数は4月に14.0%減、5月には30.3%減にまで落ち込んだ。

 病院だけでなく診療所の業績も急落している。日本医師会によると、今年5月の入院外総点数(入院外保険収入)の前年同月比は20.2%減だった。小児科と耳鼻咽喉科では総点数が50%以上減少した例もある。院内感染を恐れた患者・患者家族による受診抑制がほかの診療科よりも著しかったのだ。

 その結果、5月の医業利益は有床診療所が360万円の赤字、無床診療所は120万円の赤字だった。都道府県医師会の調査には切迫したコメントが寄せられている。

「慢性疾患の患者から、長期処方や、電話等で投薬を求める要請が多くなったことで、経営を圧迫している」(内科)

「収入が激減し、人件費も賄えない。月に3日臨時休業を職員に取得してもらい、雇用調整助成金を申請中である。しかし、焼け石に水であり、このままだと職員の離職にもつながりかねない」(小児科)

「コロナ疑い患者を最初に診るのは地域の開業医である。このままでは多くが閉院し、それらの負担は基幹病院を脅かす」(耳鼻咽喉科)

補正予算でも不足

 こうした苦境に対して、第一次補正予算で医療分として「新型コロナウイルス感染症緊急包括支援交付金」1490億円、第二次補正予算で同1兆6279億円が確保された。一次補正の対象は、空床確保、宿泊療養の体制整備、応援医師派遣などの支援。二次補正では、一次補正の対象事業への交付金増額とともに、新規事業メニューとして

・重点医療機関の病床確保

・患者と接する医療従事者への慰労金の支給

・新型コロナ疑い患者受入れのための救急・周産期・小児医療機関の院内感染防止対策

・医療機関・薬局における感染拡大防止の支援

が追加された。さらに一次補正・二次補正とは別に、重症・中等症の新型コロナ患者への診療評価の見直し、PCR・抗原など検査体制の強化、福祉医療機構の優遇融資の拡充などが支援される。

 いずれも都道府県を経由して執行され、一次補正分は7月から執行が始まり、二次補正分は8月中に執行される予定だ。さらに診療報酬でも、重症・中等症の新型コロナ患者へ診療の見直し(診療報酬の3倍引き上げ)や、重症・中等症の新型コロナ患者の範囲拡大など特定的な措置が講じられている。

 これらの支援措置の効果が評価されるのはこれからだが、早くも予算不足を指摘する意見が出ている。日医の中川俊男会長は7月22日の定例会見で「第二次補正予算による各種の支援金については疲弊した医療機関に応えるだけの額に至っていない。スピード感をもって第二次補正予算の予備費の活用が必要だ」と主張した。公私病連も冒頭で取り上げた声明で「ハイリスク・ローリターンの病院診療報酬の抜本的な改善が必要である」と言及した。

議論そのものに反対

 ところが、さらなる診療報酬での対応には、議論そのものに反対する意見が出ている。7月22日に開かれた中央社会保険医療協議会(厚労相の諮問機関)の総会で、診療側委員の松本吉郎・日本医師会常任理事が、診療報酬上の特例的な対応を含めて十分だったかどうかの議論を提言したところ、支払側委員の幸野庄司・健康保険組合連合会理事はこう主張した。

「新型コロナの臨時的な対応が医療機関の経営に及ぼす状況を把握することは否定しないが、診療報酬に絡めた議論をすることは明確に否定しておく。中医協はそういう場ではない」

 さらに幸野委員は、中医協事務局を担当する厚労省に「診療報酬を絡めて議論することが前提でないことを明言してほしい」と迫った。この要請に対して、厚労省保険局の森光敬子医療課長は回答を避けた。

「どのような議論をするかは中医協で決めてもらうことだと思っている。どういうふうに議論してはいけないとか、するべきだということは、私の口から申し上げることではないと思っている」

 次回の中医協総会では、どんな展開になるのだろうか――。

(文=編集部)

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