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石原結實「医療の常識を疑え!病気にならないための生き方」

なぜスウェーデンは、コロナ感染者数が突出して少なくなったのか?

文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士
なぜスウェーデンは、コロナ感染者数が突出して少なくなったのか?の画像1
「Getty Images」より

 ヨーロッパでは新型コロナウイルスの「第二波」が押し寄せ、外出や経済活動の制限が再び始まった。フランス政府は10月17日、首都パリなどで夜間の外出を禁止。スペイン政府は同月9日、マドリードと周辺自治体に15日間の非常事態宣言を発し、移動を制限。イギリス政府はマンチェスターなどで同月23日からパブやバーの休業を命じた。イタリアではミラノがあるロンバルディア州で同月22日より深夜外出の原則禁止令が出された。チェコとアイルランドでは同月22日よりEUでは初めて、2度目のロックダウン(都市封鎖)が始まった。

 ヨーロッパの新型コロナウイルスの累積感染者数は同月22日に560万人を超え、アメリカ、インドに次ぐ3番目の多さとなった。わが国では、東京、大阪、北海道などで増減はあるが、感染者数は非常事態宣言前よりむしろ増加している。

 このまま、冬が到来すると新型コロナウイルス流行の「第三波」が日本にもやってくると想定しておいたほうが合理的である。「第三波」による被害を最小限に食い止めるためには、「第一波」がヨーロッパに波及した折も、ロックダウンを採用せず、国民に「集団免疫」を獲得させるような施策を取ったスウェーデンを見習うべきだ。

 10月21日までの10日間の新型コロナ感染者数と死者数(人口10万人当たり、ヨーロッパ疾病予防管理センターのデータより)をみると、以下の通りスウェーデンの少なさが際立っている。

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 このウイルス感染を防ぐために、日本でもヨーロッパでも「三密を避ける」「マスクの着用」「消毒」が推奨、半ば強制されている。東京の地下鉄や電車の中、街中の人々はほぼ100%マスクを着用し、少々異様な違和感を覚えることすらある。

 自己主張が強く、何事にも強制を嫌がるイギリスやフランス、イタリアなどのヨーロッパ人のマスク着用率は「76~88%」に対して、スウェーデンではわずか「9%」(イギリス調査会社ユーガブによる)だという。スウェーデンの「公衆衛生局」のコロナウイルス対策の責任者で疫学者のアンデシュ・テグネル博士は、「マスクが感染を防ぐ科学的根拠は非常に弱い」とさえ述べている。

「三密を避ける」「マスクを着用する」「消毒をする」などウイルスが体内に侵入することを防ぐ方法は、それが成功すればするほど「体内に免疫ができない」状態が続き、半永久的にウイルスに感染する危険性を持ち続けるという結果を招来する。「ウイルスや病原菌に一回感染し免疫ができる」と、再び同じ病原体を体にもらっても症状なしか軽症で済む。

 新型コロナウイルスに国民の25%が感染すると、この感染症は終息していく、と主張する学者もいる。これこそがスウェーデンが終始一貫してとってきた施策「集団感染」政策である。

免疫の仕組み

 さて、ここで「免疫の仕組み」について解説してみる。ウイルスが体内に侵入し、気管支や肺などの細胞にくっつき、さらにその細胞内に侵入すると「感染」が成立する。

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 ウイルスが気管支や肺にくっついても、細胞内に侵入する前に排除すれば「感染」も「発症」もしない。「免疫」には「自然免疫」と「獲得免疫」がある。

<自然免疫>

(1)病原体(ウイルスや細菌など)が体内に侵入しないように防ぐ「皮膚」、鼻毛や気管支の繊毛などの物理的バリアー、胃液(強酸)、だ液、鼻汁、涙(IgAなどの免疫物質が存在)など

(2)好中球、単球(マクロファージ)、NK(natural killer=自然の殺し屋)細胞など白血球の働き

 こうした白血球は「貪食細胞」と呼ばれ、体内に侵入してきた病原体を貪食して排除するほか、十分に抑制できないほど敵(病原体)の勢いが強いと、その情報を「獲得免疫」に知らせる。がん細胞の貪食でも有名なNK細胞はウイルスに感染された細胞を直接、貪食、殺戮(さつりく)し、「獲得免疫」が働きだすまで大活躍する、いわば「先発隊」。軽い感染症なら「自然免疫」だけで回復し、「獲得免疫」を発動させる必要はない。

<獲得免疫>

「自然免疫」だけで病原体を防御できないときに発動する。

(1)液性免疫

 病原体に対して「β―リンパ球」により抗体(免疫グロブリン)がつくられ、その特定の病原体にだけ反応して排除する。一度感染した病原体に対して、半永久的に「記憶」を持つので、再び病原体が侵入してきても抗体が攻撃してくれるので、症状なしか軽症で済む。「一回ハシカに罹れば二度と罹らない」のは「液性免疫ができた」ことによるもので一般に「免疫がついた」というのはこの現象のことをいう。

(2)細胞性免疫

 キラーT細胞(細胞傷害性Tリンパ球)がウイルスに感染した細胞を細胞ごと排除する。「免疫」は、「獲得免疫」より「自然免疫」のほうがより重要とされる。私が長崎大学大学院博士課程で白血球の研究をしていた40数年前、某大学の陸上競技部で合宿中の学生の「白血球の貪食能」について実験研究したことがある。

 毎日、ハードな短距離走の練習をこなしていくと、日が進むごとに好中球、マクロファージによる病原体貪食能が増強していくことが確かめられた。つまり、筋肉運動をすると「自然免疫が増強する」という証左である。また別の実験で、入浴後も白血球の貪食能が増強することが確認できた。

「筋肉運動」「入浴」後に起こる同じ現象は「体温上昇」である。よって、運動、入浴、サウナ、日本酒の熱燗や熱い味噌汁、熱い生姜紅茶を飲むなど、発汗する(体温が1℃上昇)ような習慣を心掛けると「自然免疫」が増強するといってよい。

 腸の中には血液中のリンパ球を含め、体全体のリンパ球の70%が存在している。この腸内のリンパ球を活性化してくれるのが乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌である。腸内の善玉菌を増やすには、納豆、漬物、キムチ、梅干し、味噌などの発酵食品を努めて多く摂取すること、そして善玉菌の棲み処と餌になる食物繊維を、それを豊富に含む海藻、豆類(大豆、小豆)、ゴマ類、ゴボウ、タケノコなどを多食することによって存分に摂ることである。

(文=石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士)

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

石原結實/イシハラクリニック院長、医学博士

1948年長崎市生まれ。長崎大学医学部を卒業後、血液内科を専攻。「白血球の働きと食物・運動の関係」について研究し、同大学大学院博士課程修了。スイスの自然療法病院B・ベンナー・クリニックや、モスクワの断食療法病院でガンをはじめとする種々の病気、自然療法を勉強。コーカサス地方(ジョージア共和国)の長寿村にも長寿食の研究に5回赴く。現在は東京で漢方薬処方をするクリニックを開く傍ら、伊豆で健康増進を目的とする保養所、ヒポクラティック・サナトリウムを運営。著書はベストセラーとなった『生姜力』(主婦と生活社)、『「食べない」健康法』(PHP文庫)、『「体を温める」と病気は必ず治る』(三笠書房)、石原慎太郎氏との共著『老いを生きる自信』(PHP文庫)、『コロナは恐くない 怖いのはあなたの「血の汚れ」だ』など、330冊以上にのぼる。著書は韓国、中国、台湾、アメリカ、ロシア、ドイツ、フランス、タイなど世界各国で合計100冊以上翻訳出版されている。1995~2008年まで、日本テレビ系「おもいッきりテレビ」へのレギュラー出演など、テレビ、ラジオ、講演などでも活躍中。先祖は代々、鉄砲伝来で有名な種子島藩の御殿医。

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