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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

マクドナルドと大戸屋、明暗分けたマーケティング…“ノイジー・マイノリティ”への配慮で差

文=大﨑孝徳/神奈川大学経営学部国際経営学科教授
【完了】マクドナルドと大戸屋、明暗分けたマーケティング…ノイジー・マイノリティへの配慮で差の画像1
マクドナルドの店舗

 これまでマーケティングがビジネスをはじめ、世の中に大きく貢献してきたことは間違いないであろう。売り手志向から買い手志向への転換により、多くの商品やサービスは顧客にとって好ましいものになっている。

 売り手志向では、たとえばエンジニアは本質的にはより高い機能的価値の実現に注力してしまう。“史上初”といった商品を、自らの名前により世に誕生させたいわけである。しかし、一般的には高い機能的価値の実現はコストアップ要因となり、販売価格も上昇してしまう。

 さらに、あるプレス機メーカーが1時間に1000枚を打ち抜けるプレス機を2000枚へと機能的価値を向上させたが、価格アップに加え、多くのユーザー企業の必要数量を大幅に超えてしまい、在庫の置き場が必要となることなどから拒絶され、深刻な販売不振に陥ってしまったといった話も有名である。つまり、顧客の声を聴くこと、ニーズに注目することは極めて重要である。

 しかしながら、何事にもバランスは必要である。たとえば、“おもてなし”の重要性が声高に叫ばれる昨今、過度のサービスの提供により、困惑もしくは逆に居心地の悪い思いをする場合が筆者にはある。おそらく、サービスを提供するスタッフも、ここまでのサービスはさすがにやり過ぎと自覚しながらも、マニュアルに従い業務を進めているのではないかと推測している。

 このように理不尽な思いをしながら業務を行うことは、当然のことながら従業員満足度の低下につながっていく。もちろん、過度なサービスを提供するには、その分余計なコストが必要となるわけであり、売り手・買い手ともに不幸な状態である。

 また、アーティストが自らの熱い思いを封印し、顧客である視聴者を対象にクリエイティブな作業を行っても、顧客を大いに刺激するものが生まれるとは考え難い。そもそも、そうした行為は楽しくないだろう。厳しいビジネスの世界に“楽しさなんて甘い”との意見もあるだろうが、これからのマネジメントやマーケティングにおいては、こうした視点が重要になるのではないかと感じている。

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