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藤和彦「日本と世界の先を読む」

新たなパンデミックのリスク、「ニパウイルス」の中国での感染爆発に警戒高まる

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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「Getty images」より

 新型コロナウイルスの発生源を調べるため世界保健機関(WHO)が中国湖北省武漢市に派遣した調査団は2月3日、中国科学院武漢ウイルス研究所を訪問した。WHO調査団は、疫学、ウイルス学、公衆衛生学、動物健康学、食品安全学などの専門家から構成され、2週間の隔離期間を終えた1月29日から現地調査を開始していた。

 ウイルス研究所は、トランプ前米政権が「新型コロナウイルスの流出先だ」と主張していた施設である。WHOの調査団はこの施設に4時間ほど滞在し、「バット(コウモリ)・ウーマン」の異名を持つ著名な研究者、石正麗氏らと協議した。

 石氏は2002年から03年にかけて中国を中心に世界で流行したSARSウイルスがコウモリ起源だということを証明して「バットウーマン」と呼ばれるようになった。WHO調査団は訪問後、「率直でオープンに議論した。重要な質問にも返答があった」としているが、「多くの疑問が残った」とコメントするメンバーもいた。

 ウイルス研究所の訪問に先立ち、WHO調査団は世界で初めて新型コロナウイルスの集団感染が確認された武漢市の華南海鮮卸売市場を視察したが、同市場は徹底的に消毒され、売られていた野生動物(キツネ、アライグマ、シカなど)も回収されていた。当時の状況を正確に把握するのは困難だったとされている。

 「このままでは、新型コロナウイルスの発生源は中国ではないとする同国の主張にお墨付きを与えるだけの調査に終わりかねない」との懸念が高まっているが、WHOはあくまで「調査の目的は、新型コロナウイルスの感染経路を追跡することで、将来のウイルスの感染拡大を防ぐことが重要であり、中国の科学者や公務員と共同調査の協力関係を構築することが重要である」とのスタンスである。どういう意味だろうか。

発生源はコウモリ

 新型コロナウイルスの発生源に関して世界の研究者が注目しているのは、13年に中国雲南省の洞窟に生息するコウモリから採取されたコロナウイルスである。このウイルスの遺伝情報が新型コロナウイルスと96%以上合致しているからである。

 この洞窟は、昆明市の市街地から南西に40キロメートル、ラオスとベトナムとの国境近くの山村にある。このあたりはかつて銅の採掘場があったが、12年に坑道に入った人から重症の急性呼吸器疾患が多発した(20年12月17日付朝日新聞)。コウモリの糞にこのウイルスが潜んでおり、それを吸った人が発症したとされている。

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