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藤和彦「日本と世界の先を読む」

福島沖地震で、次は北海道(十勝沖)大規模地震に要警戒か、首都直下型地震も要注意

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
福島沖地震で、次は北海道(十勝沖)大規模地震に要警戒か、首都直下型地震も要注意の画像1
福島県沖を震源とする地震に関する関係閣僚会議(「首相官邸 HP」より)

 「気象庁はいつまで東日本大震災の余震だと説明するつもりなのだろうか」

  気象庁の見解に疑問を投げかけるのは、角田史雄埼玉大学名誉教授である。角田氏が問題にしているのは、2021年2月13日午後11時8分に福島沖(深度約55キロメートル)を震源とするマグニチュード7.3の地震のことだが、気象庁は翌14日午前1時過ぎの記者会見で「この地震は東日本大震災の余震である」との見解を示した。大方の地震学者も気象庁の見方に同意している。

 地震発生のメカニズムといえば、「プレートテクトニクス説」である。プレートテクトニクスとは、「地球の表面がプレートと呼ばれるいくつかの部分に分かれており、プレートが独立して運動することで地震などさまざまな地質現象が起こる」と考える理論のことだが、角田氏は「熱移送説」というまったく別の説を唱えている。

 熱移送説については本コラムで何度も説明してきたが、かいつまんで説明すると以下の通りである。

(1)熱移送説で主役を務めるのは、「プレートの移動」ではなく「熱エネルギーの伝達」である。その大本のエネルギーは、地球の地核から高温の熱の通り道に沿って地球の表層に運ばれ、表層を移動する先々で火山や地震の活動を起こす。

(2)熱エネルギーの表層での出口のひとつは南太平洋(ニュージーランドからソロモン諸島にかけての海域)に存在し、南太平洋から出てきたPJ(インドネシアからフィリピンに向かい台湾を経由して九州へ)とMJ(フィリピンから伊豆諸島を経由して首都圏へ)という2つのルートで日本に到達する。PJとMJという2つのルートは、共に東北地方の太平洋側に抜け、その後、北海道の方向に流れていく。

(3)熱エネルギーが伝わると熱のたまり場では噴火が起き、地盤に「問題」がある地点では地震が発生する。熱エネルギーの速度が一定であることから、火山の噴火から地震発生の予兆を捉えることが原理的に可能である。

 以上が熱移送説の概略であるが、角田氏は2月13日深夜の地震はどのようなメカニズムで発生したと考えているのだろうか。

吾妻山の動きに注目

 火山と地震の活動に関連があると考える角田氏は、吾妻山の最近の動きに注目する。吾妻山とは福島県と山形県の県境に沿って東西に延びる火山のことである。火山噴火予知連絡会の監視対象となっており、18年5月に火山性地震が増加したことから、噴火警戒レベルが2に引き上げられ現在に至っている。その吾妻山の地下のマグマ活動が最近活発になっていたことから、角田氏は「吾妻山のマグマ活動を活発化させていた熱エネルギーが、福島沖で大規模な地震を引き起こした」との見方を示している。

 2月13日深夜の地震は、東北や関東地方で100人以上の負傷者を発生させたが、今後どのような展開を見せるのだろうか。

 気象庁は「今後1週間は再び震度6強の地震が起きる可能性がある」と大規模地震が発生した際に必ず持ち出す「決まり文句」を繰り返しているが、角田氏は「今後数カ月後に北海道で大規模な地震が発生するかもしない」と危惧している。

「熱移送説」に従えば、福島沖で大規模な地震を発生させた熱エネルギーが北上し、北海道で再び大規模な地震を発生させる可能性があるからだが、角田氏は「東北地方の太平洋側から千島列島にかけて熱エネルギーの移送が最近活発になっている」としている。

 角田氏が懸念しているのは「十勝沖地震」の再来である。十勝沖地震とは、北海道十勝地方の沖合を震源として起こる地震のことであり、十勝沖では直近100年間でも大規模地震が多発している。1952年3月にマグニチュード8.2、68年5月にマグニチュード7.9、2003年9月にマグニチュード8.0、08年9月にマグニチュード7.1の大規模地震が相次いで発生している。十勝沖は、大方の地震学者も「次の大規模地震が起きる可能性が高い」と注視している地域であるが、角田氏も「次に起こる十勝沖地震では津波が発生する可能性がある」と警戒する。

伊豆半島周辺

 非常に気になる予測だが、筆者が最も気にしているのは首都直下型地震である。首都圏に達するMJルートについて角田氏は、西之島(東京の南方約930kmにある火山島、MJルート上に位置する)の噴火活動に注目している。西之島の火山活動を引き起こす熱エネルギーが北上し、首都圏に到達するからである。

 西之島は13年の大噴火で面積が2倍以上になり話題となったが、その後も15年、17年から今年にかけて断続的な噴火を繰り返している。このことは熱エネルギーが首都圏に継続的に到達していることを意味するが、首都圏に流れ込んでいる熱エネルギーにより千葉県東方沖や茨城県などで比較的大きな地震が多発しているのに対し、地震の多発地帯である伊豆半島周辺では19年6月24日にマグニチュード4.1の地震が発生した程度である。

 あまり知られていないが、1923年に発生した関東大震災(マグニチュード7.9)の震源が伊豆半島周辺であるとの説が有力であり、当該地域で大規模な地震が発生するリスクが常に存在しているのである。

 伊豆半島周辺の地震発生について角田氏に尋ねたところ、「西之島の活動が再び活発になっていることから、伊豆半島周辺では数年後に大規模な地震が発生する可能性がある」とのことである。油断は禁物である。大規模地震の発生を予測することで世の中をいたずらに騒がせるつもりは毛頭ないが、「備えあれば憂いなし」との願いから、拙稿をしたためた次第である。

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー

1984年 通商産業省入省
1991年 ドイツ留学(JETRO研修生)
1996年 警察庁へ出向(岩手県警警務部長)
1998年 石油公団へ出向(備蓄計画課長、総務課長)
2003年 内閣官房へ出向(内閣情報調査室内閣参事官、内閣情報分析官)
2011年 公益財団法人世界平和研究所へ出向(主任研究員)
2016年 経済産業研究所上席研究員
2021年 現職
独立行政法人 経済産業研究所

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