
一向に終息の気配を見せない新型コロナウイルスの流行下で、その影響を直接的に受けた人だけでなく、巷には支援を必要としている人が数多くいる。今回は、平時から行われていた子ども食堂の取り組みを、コロナ禍において多くの人の協力のもとで実現した“とある町のイベント”をご紹介したい。
3月28日、千葉県松戸市の旧郵政省宿舎駐車場にて「移動する子ども食堂 さくら通りにキッチンカーがやってくる!」というイベントが行われた。これは、5台のキッチンカーで計500食のお弁当を無料で提供するというもの。六実六高台地域づくり委員会が主催し、六実六高台地区会や同地区の社会福祉協議会、民生委員、子ども食堂などが共催。このイベントでキッチンカーのとりまとめを行ったのが、松戸市の「大衆食堂 ことこと」の店長・伊藤勇太さんだ。

イベント開始前、100食のロコモコ丼を提供するため、7升のご飯と100枚の煮込みハンバーグ、100食分の野菜や温泉卵を用意し、黙々と容器に盛り付けている伊藤さんに、さまざまな話をうかがった。
見えづらくなった“子どもの貧困”の実態
毎月、子ども食堂でお弁当支援を行っている伊藤さんでも、最近は、苦しい家庭環境にある子どもなのかどうかを外見から判別するのは難しいという。
「昔だったら、貧しい家の子どもはTシャツがよれよれだったり、ズボンや靴がボロボロだったりしました。でも、最近だと、子どもは普通の格好をしているし、お母さんはスマホを持っているけど家の電気は止められている、みたいな家庭があるんです」(伊藤さん)
家での食事はカップラーメンばかりなど、栄養の偏りが起きているパターンもある。また、子ども食堂では、提供したお弁当を食べている子どもに声をかけたり、話を聞いてあげたりする担当の大人がその場におり、会話をすることで初めて境遇が明らかになる場合もあるという。
そうした中で一番気がかりなのは“負の連鎖”だと、伊藤さんは言う。
「貧困に陥った方は『どうせ何をやっても無駄だ』とネガティブになってしまう。そんな親のもとで育った子どもには、その考え方が植えつけられ、やがて親になったとき、その子どもにもネガティブ思考が受け継がれてしまう可能性があります」(同)
偏った価値観に染まらないためには、いろいろな大人を見たり、両親以外の大人と話したりすることが大事である。特に、負の連鎖から抜け出すためには。
子ども食堂は食べ物の提供にとどまらず、学習支援や体を動かす体験学習など、主催している人によってさまざまなカラーがある。伊藤さんが願うのは、子ども食堂が“何らかの気づきのきっかけ”になることだ。
「自分の殻に閉じこもったり、ずっとスマホのゲームをしていては何も変わりませんよね。お弁当を食べて『おいしい』と感じたことで、自分でも料理をつくるようになるとか、何でもいいんです。子ども食堂を訪れた後、何かしらの良い変化が生まれたらいいなと思っています」(同)