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菅首相、IOCの言いなり、五輪中止の提案すら行わず…“壊れた”国会答弁に与党内で危機感

文=編集部
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参議院予算委員会で蓮舫氏に質問に答弁する菅首相(参議院公式サイトより

 菅義偉首相は“壊れた”のか――。Twitter上では11日午前、「国会騒然」がトレンド入りした。10日の参議院予算委員会で、野党の質問に対して菅首相がちぐはぐな答弁を繰り返したことを、一部報道やまとめサイトなどが報じたのがきっかけだった。菅首相といえば、首相就任以後、答弁原稿の音読が目立ち、与党からは「官房長官時代にあった答弁の“キレ”が失われた」とぼやかれ、野党からは「実質的な答弁拒否だ!」などと批判されて久しい。

 そして今回もまた、菅首相は新型コロナウイルス感染症と東京オリンピック・パラリンピック競技大会の質疑に関し、事前に用意した同じ原稿を“壊れたレコード”のように繰り返し読み続けた。野党の質問と齟齬が生じたほか、あたかも「日本国政府は五輪の開催ノータッチ」とも取られかねない空疎な答弁も飛び出し、自民党内からも失笑が漏れる有様だ。

 以下、参議院公式サイト『インターネット審議中継』にアップされている5月10日開会の予算員会から、一連のやり取り(動画該当部分は1:07:40~)を書き起こした。同一の原稿を読んでいると思われる部分は下線を引いた。

5月10日参議院予算員会の質疑より

立憲民主党蓮舫氏(以下、蓮舫) (新型コロナ対策の)対応が後手後手になる状況の中で、東京オリパラ大会本当にやるんですか?

菅義偉首相(以下、菅) 現在の感染拡大を食い止めるために全力を尽くします。また東京大会についてはIOC(国際オリンピック委員会)は開催をすでに決定し、各国に確認していますが、開催にあたっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていくというのが、開催にあたっての政府の基本的な方針であります

蓮舫 開催国の日本の内閣総理大臣がオリパラ、延期中止をいえる権限はないという認識ですか。

菅 オリンピックの主催者でありますけれども、IOC、IPC(国際パラリンピック委員会)、東京都、組織委員会(東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会)のこの4つが主催者となっております。政府としては今、申し上げましたけれども、現在の感染拡大をくりとめるために全力を尽くすのと同時に、開催にあたっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていくというのが、開催にあたっての政府の基本的な考え方であります。

蓮舫 去年、東京オリパラ大会を1年間延期した経緯をご存知ですか。

丸川珠代五輪担当相 安倍晋三前総理、当時の組織委員会会長の森会長、東京都の小池百合子都知事が同席のもとでIOCのバッハ会長と電話で会談して開催の延期を決定したものです。

蓮舫 (中略・編集部注:当時の安倍前総理の記者会見の内容を引用し、安倍前総理が感染症の広がりを踏まえ、バッハ会長に1年延期の検討を提案したことを示した上で)総理大臣が提案すればIOCは検討してくれる。その提案をされませんか?

菅 先ほど申し上げましたように、開催にあたっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていくのが開催にあたっての政府の基本的な考えであります。

蓮舫 (中略)安倍前総理が延期を求めた時より、国民の命と健康が脅かされている。この危機的な状況をバッハ会長に相談するとも言えないんですか?

菅 先ほど来、申し上げていますけれども、開催にあたっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていく、これが開催にあたる日本の内閣総理大臣の私の基本でございます。

(中略)

蓮舫 政府が入国制限、水際対策している中で今年3月、海外から日本来られた方は1万2300人。オリパラは選手だけで1万5000人。1ヶ月分の人数を超えるんです。9万人以下の数万人規模が(オリパラで)一気に我が国にやってくる。ボランティアは8万人、都市ランティアだけで3万人、本当に(感染拡大をしないよう)管理できるんですか。

菅 政府としては今、申し上げましたけれども、開催にあたっては選手や大会関係者の感染対策をしっかり講じ、安心して参加できるようにするとともに国民の命と健康を守っていくというのが、開催にあたっての基本的な考え方であり、このようにしたいと思っております。

オリンピックの開催是非に政府は言及できない?

 菅首相当人や官邸が考えるほど、この答弁原稿は万能ではなかったようだ。自民党清和政策研究会の中堅参議院議員はぼやく。

「ああ、こりゃダメだと思いました(苦笑)。五輪をめぐる発言では、森先生(森喜朗氏)や二階(俊博)幹事長が失敗したばかりなので、慎重にならざるを得ないのはわかりますし、お疲れでもあるのでしょうが、あの答弁では政府がまったくIOCと交渉していないように見えてしまいます。全責任を丸投げしているみたいじゃないですか。

 これでは野党やマスコミの追及が過激化するだけでしょうし、政府・組織委への日和見とフリーライディングを続ける小池都知事を利するだけです。『安全安心な五輪のため、政府としてリーダーシップをもって東京都と組織委を指導、助言していく』くらいのことは言えなかったのでしょうか」

立憲民主関係者「オリンピックの非民主性が明確になった」

 一方、立憲民主党参議院秘書は一連の答弁を次のように問題視する。

「今回の蓮舫先生への答弁で、オリンピックがいかに非民主的なものなのかが明らかになったのではないでしょうか。IOCも組織委も、どれほど国際的に権威があっても突き詰めればスポーツ業界の団体のひとつに過ぎません。団体内の選挙で委員や理事が選出されているとはいえ、あくまで一握りのスポーツ選手や業界関係者の中から選ばれているに過ぎません。広く一般国民から選挙で選ばれた人間が運営しているわけではないのです。

 にもかかわらず、開催国の政府に対して『黙って国費だけ投入していろ』ということなのでしょうか。首相の答弁は、『IOCに言われるがまま開催するのが政府の役目』と捉えることができてしまいます。開催地の国民から選ばれた議会や政府が、オリンピックの運営に対してなにも口出しできないというのは異常でしょう。いずれにしても、あのやる気のない答弁を見る限り、首相は五輪のかじ取りに興味がないようですし、先が危ぶまれます」

 IOC、組織委、東京都、政府それぞれがハレモノに触るかのように五輪を扱い、誰の責任も明確にされないまま、今日もなし崩しに開催の準備が進んでいく。

BusinessJournal編集部

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