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「行けば地域で批判にさらされる」…五輪チケット所有者たちの困惑、払い戻し申請めぐり

文・構成=編集部
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東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会公式サイトより

 間もなく開会式まで1カ月を切る東京オリンピック(東京五輪)。21日には日本政府、東京都、国際オリンピック委員会(IOC)、国際パラリンピック委員会(IPC)、東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(組織委)による5者会談が開かれ、観客数上限を会場の定員50%以内で最大1万人とすることを正式に決定した。組織委はチケットの販売数がこの上限を超えているケースに関して、再抽選を検討する方針を示している。

 一方、菅義偉首相は同日、都内で記者団に対し「(新型コロナウイルス感染症が拡大して)緊急事態宣言が必要になった場合は、無観客というのも臨機応変に行う」と述べた。流動的な状況は当面続くように見える。

 5者会談後の会見で、組織委はこれまでに販売されたチケットのデータをあらためて公表した。販売総数は448万枚で現時点までに払い戻しが84万枚あり、なおも有効なチケットは364万枚。ここから開会式までに再抽選して91万枚を削減し、最終的に272万枚にするのだという。

 チケットは2019年6月からインターネット上で抽選結果の発表、購入手続きが開始された。計2回の抽選を経た時点で、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が明らかになり、昨年3月に東京五輪の1年開催延期が決定。組織委がチケットの払い戻しを開始したものの、「払い戻し申請手続を行ったのに、口座番号相違等何らかの事由により指定口座への振込みが完了しない返金の遅延」(3月24日の組織委のプレスリリース)が発生する事例などもあり、混乱は続いている。

 無観客開催になるのか、はたまた5者会談で示された観客上限での開催になるのかなおも不透明だが、少なくとも「現在のチケット所持者全員の観戦」は不可能な情勢だ。本来であればチケットを購入した人々も五輪というイベントにとっての欠かすことのできないファクターのはずだが、一連の騒動では蚊帳の外に置かれ続けている。今、チケット所有者は何を思うのか。その声を伝える。

「開会式のプラチナチケットを払い戻すつもり」

 プラチナチケットと言われる開会式のチケットを妻の分を含めて計2枚入手した千葉県内に住む70代男性は次のように困惑する。

「C席8万2000円のチケットを2枚持っています。金婚式の記念として購入しました。裕福な老後生活ではなく、安い買い物ではありませんでしたが思い切って購入しました。残っていた退職金の一部を使い、夫婦で楽しみにしていたこともあって、これまで払い戻し申請はしませんでした。心のどこかでコロナが収まってくれることを祈っていました。私の親は1964年の前回の東京オリンピックの観戦ができなかったことを悔いたまま、昨年亡くなったこともあり、見に行きたいと思っていました。

 しかし、この情勢下ではワクチンを受けても厳しいですよね。私も妻も後期高齢者ですし、万が一感染して、息子や孫に悲しい思いをさせてはいけませんし、医療関係者の方に迷惑を掛けたらいけないのかな、と。きっと今の情勢では再抽選して人を絞るにしても、混乱は必至でしょう。会場の対策も不安なので払い戻しが始まれば、申請しようと考えています。とても残念です」

「感染の不安より『東京に行った』と陰口を言われるのが怖い」

 また感染の不安以上に、東京五輪やコロナ禍への攻撃的な世論に不安感を感じる声も聞かれた。岩手県内の会社員男性は、高校の陸上部に所属する長男と一緒に、「陸上競技午後の部」を観戦することを楽しみにしていたのだという。

「昨年5月ごろ、同県内では感染を不安視する一部の住民による県外ナンバー車への誹謗中傷が喧伝されるようになりました。長らく岩手が県内感染者ゼロを誇っていたことの反動だったのだと思います。今なお『コロナ』『東京』『五輪』という言葉に対する微妙な空気感があります。長男は中学時代からずっと陸上に打ち込んできました。楽しみにしていた五輪を見せてやりたいです。

 正直、仕事での東京出張ですらハードルが高いのに『有休を使って息子と一緒に東京五輪の観戦に行ってきました』なんてとても言えません。感染でもしたら本当に大変なことになる。会社だけではなく地域や学校にも『五輪に行って感染した』という情報は広まるでしょう。私だけではなく家族全体が批判にさらされるかもしれない。仮に再抽選で当選したとして、本当に行けるのか。悩みは尽きません」

「観戦以外の選択肢はない」

 一方、サッカー準々決勝2枚、サッカー準決勝2枚、バスケ3位決定戦・同表彰式2枚のチケットを所有する名古屋市在住の40代男性会社員は次のように述べる。

「観戦以外の選択肢なしです。2020年11月にも払い戻し可の案内がありましたが、検討すらしませんでした。自分が生きている間に生で観戦できる機会は訪れないだろうという思いで申し込みました。幸い3試合で6枚のチケットが当たりましたので、行かないという選択肢はありませんでした。次回か次次回、次次次回の有観客での(五輪の)日本開催を担保できていれば、今回は無観客試合でも良いかと思いますが、再度の有観客での日本開催が担保できないのであれば、2021年に有観客での開催もやむなしと考えます。

 ただし、政府として有観客でやると決めたのであれば、(結果論になりますが)それができるための対応(厳格なロックダウンや、早期のワクチン接種など)を迅速に行うべきであったと考えます。今の政府等の対応が100点満点とは思いませんが、チケット保有者の立場としては、開催に尽力している点には関してとても心強く感じます。

 有観客が無観客のどちらが安全かという極論で議論したら当然無観客のほうが安全ですが、Jリーグの試合等で集団感染が発生したというのとは聞いたことがありません。でき る限りの対策を施したうえで、人数を入れて五輪が開催される事が望ましいと考えています」

BusinessJournal編集部

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