
中国共産党中央宣伝部は8月に入って、「フェイクニュース撲滅キャンペーン」を全国的に展開することを宣言。報道機関やそのスタッフによる違法な取材活動や、ソーシャルメディアやパブリックアカウントによる取材活動が主な対象で、フェイクニュースを流したメディアなどに対して「強硬手段に打って出る」よう指示したという。
中国では現在、河北省の避暑地、北戴河で中国最高指導部と長老指導者らが非公式に、来年秋に行われる中国共産党の第20回党大会の最高人事問題などを協議しているとみられ、フェイクニュース撲滅キャンペーンは指導部の人事情報や政治的なスキャンダルなど敏感な情報を取り締まる狙いがあるとみられる。
とくに中国の内部情報に詳しい海外の報道機関や香港メディア、中国内のインターネット情報が取り締まりの対象になるとみられ、中国は今後、来年秋の党大会を目指して政治の季節に突入する。
国外退去処分やビザ発給停止処分も
今回のキャンペーンのきっかけは、英BBCなど海外メディアが7月の河南省鄭州市の洪水被害を現地で報道したことに対して、現地住民数十人が「中国を悪く報道するな」などと記者やカメラマンを取り囲み、「映像を消去しろ」などと叫んで、記者やカメラマンにつかみかかるなど暴力を働いたことだ。
BBC北京支局は洪水を取材した記者がネット上で激しい批判を受け、別のメディアも現地で嫌がらせを受けていると指摘し、「外国人記者を危険にさらす攻撃が続いている」と報じた。
これについて、中国共産党の青年組織である中国共産主義青年団の河南省支部がソーシャルメディアで、BBCの記者の動向を追跡するようフォロワー160万人に呼び掛けたことから、一部の愛国主義的なネットユーザーがBBCの記者に「貴様を殺害する」などとの「殺害予告」をするなど、事態はエスカレートしていった。
中国外国人記者クラブは声明で、「中国共産党に属する組織の発言が、中国で活動する外国人記者の身体的安全を直接危険にさらし、自由な報道を妨げている」と訴えた。
しかし、中国外務省の趙立堅報道官は「BBCは中国を攻撃して中傷し、ジャーナリズムの基準を大きく逸脱している」と非難。BBCを「フェイクニュース放送局」と決めつけ、さらにBBCが「中国国民に不人気」なのは当然で、「理由のない憎しみなど存在しない」と強調した。その後、中国共産党中央宣伝部が「フェイクニュース」に対する批判キャンペーンの開始を宣言したのだ。