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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

茨城最強・サザコーヒーのゴン攻め戦略…スタバでも赤字のコロナ不況で、単年度黒字確保

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント
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2021年3月の「三大ゲイシャまつり」ではコーヒー豆が3割引に。多くのお客さんが集まり、“タダコーヒー”も振る舞われた(写真提供:サザコーヒーホールディングス)

「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画や著作も多数あるジャーナリスト・経営コンサルタントの高井尚之氏が、経営側だけでなく、商品の製作現場レベルの視点を織り交ぜて人気商品の裏側を解説する。

 長引くコロナ禍で、外出自粛による来店客の減少や営業時間短縮など飲食店の苦境は続く。

業態別では、「居酒屋」に比べて「カフェ」は基本的に酒類提供を行わず(届け出をして行う店はカフェバーとなる)、夜間営業自粛の影響も受けにくい。だが、都心や駅前の商業施設に入居する店ほど、外出自粛や営業規制などのダメージが直撃する。

 業界最大手のコーヒーチェーンで業績も一頭地を抜く「スターバックス」ですら、運営会社(スターバックス コーヒー ジャパン)の2020年度業績は単年度赤字となったほどだ。

 そんなコロナ不況下でも、「2020年度の業績は黒字を確保した」個人チェーン店がある。人口約15万人の茨城県ひたちなか市に本店を構える「サザコーヒー」だ。

 国内で1600店以上を展開するスタバに対して、サザの店舗数は1%にも満たない15店。茨城県内が中心だが、埼玉県と東京都内の商業施設にも店がある。創業は1969(昭和44)年と半世紀を超えるが旧態依然としておらず、積極的な仕掛けを行う。

 なぜ老舗の個人系カフェが、コロナ禍でも業績を上げられるのか。

 その取り組みを2回に分けて紹介したい。会長(創業者の父)と社長(息子)それぞれの手法も興味深く、厳しい時代のヒントとなれば幸いだ。まずは現社長の仕掛けから――。

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茨城県ひたちなか市にある「サザコーヒー本店」。左側は天然鮎の販売車(2021年4月、筆者撮影)

モノづくりは真摯、コトづくりは話題性

「『良い材料×良い技術×良い人材』で、もっと美味しい商品ができます。コロナ禍が長引いて気が滅入る時期だからこそ、お客さんに楽しんでいただきたいと思っています」

 サザコーヒー社長の鈴木太郎氏は、こう話す。

 一般社団法人・日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)理事兼コーヒーブリューワーズ委員会委員長も務める同氏は、世界各国のコーヒーに精通する。スペイン語も堪能で、出身校は東京農業大学農学部で果樹園芸学を専攻。現在は社業の傍ら、筑波大学大学院で学ぶ。

 こう記すと学究肌の経営者に思えるが、マイブームの発案者・みうらじゅん氏(クリエーター)に憧れて長髪にするなど、米国西海岸のカフェオーナーにいそうなタイプだ。

 同氏の最近の活動を整理すると、大きく次の2つに分けられる。

(1)真摯な味づくり
(2)誤解を深める

 詳しい手法は後述するが、(1)はモノづくり、(2)はコトづくりだ。東京五輪の金メダル種目・スケートボードの解説に例えれば「ゴン攻め」ともいえる手法だ。

 飲食の味には徹底してこだわり、試食や試飲を繰り返す。一方で後述する「誤解を深める」では、周囲を驚かせる仕掛けも行う。お客さんが(1)を評価するからこそ、(2)が生きるのだ。

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コーヒーの抽出や味づくりを情熱的に語る鈴木太郎社長(2021年4月、筆者撮影)

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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