
香港ではここ数年、民主化機運の高まりとともに、反政府や反中国の動きが活発になり、「香港独立」を旗印に掲げて、爆発物によるテロ活動が頻発している。香港在住の邦人企業駐在員は「いま世界はアフガニスタン情勢に目を奪われているが、香港がアフガンと同じく『自爆テロの都市』になる日が来ないとも限らない」と指摘している。
香港の新中国系紙「香港文匯報」は「すでに2019年からこれまでの3年間で、12件の爆弾を使ったテロやテロ未遂が起きている。とくに、中高生が実行犯役になるケースが多く、今後も増える可能性がある」と報じている。
香港政府の弾圧的な取り締まり方法に反感
まず、最近の事件では今年7月、中高生の男女9人を含む14人が香港国家安全維持法(国安法)違反の疑いで、香港警察によって逮捕された事件が記憶に新しいだろう。これらの「テログループ」は手製爆弾を製造して、トンネルや鉄道、裁判所などへの攻撃を計画したとして、国安法の「テロ活動」の疑いがかけられている。中高生が国安法容疑で逮捕されるのは初めてだ。
警察発表によると、逮捕されたのは香港独立過激派組織「光城者」のメンバーで15~39歳の男女。このグループのリーダーは香港バプテスト大学広報部長の男、杜倚獅(39)で、このほか不動産会社幹部の男(37)やタクシー運転手、建設作業員らが主要メンバーだ。
杜らはホテルの一室を借り切って、爆弾などの兵器の製造拠点としており、警察はTATP爆弾の製造機器、火薬や化学原料、大量の通信機器、3Dプリンターと手製の拳銃部品などを押収した。また、テロ計画の資金の銀行預金60万香港ドル(約780万円)あまりの資産が凍結されている。
警察関係者によると、彼らは海底トンネルや香港中心部の鉄道の駅、裁判所、九龍地区最大の繁華街でホテルや商店、レストランなどが集中するチムサチョイ(尖沙咀)に爆発物を仕掛ける予定だったという。
その実行役が9人の中高生で、逮捕された中学生の自宅から現金約3万5000香港ドル(約46万円)が発見されており、杜らが中学生らの報酬、あるいは逃走資金として渡していたとみられる。このほか、中高生には海外で使用されたSIMカード内蔵の携帯電話が渡されており、杜らが具体的な計画の指示を伝えるために用いられていた。
香港警察本部警務処国家安全部の李桂華・高級警視は「押収されたTATP爆弾は驚くべき殺傷力を持ち、過去には世界各地のテロ組織によって大規模なテロ活動に使用され、多数の犠牲者を出している。香港で使われた場合、テロの標的になっている繁華街が多いため、多数の死傷者が出る可能性が大きい。さらに、手先に使われた中高生が最初の犠牲者になることもありうる。まさに、許しがたい犯行だ」と指摘。さらに、李氏は「杜らは組織の主犯であり、ほかに資金提供者がいるとみられ、組織を根絶やしにする必要がある」と強調した。
しかし、ネット上では「たしかに、10代の中高生が実行犯となるのはショッキングな事実だが、彼らをこのような立場に追いやったのは、警察を含む香港政府の弾圧的な取り締まり方法に彼らが反感を抱いたからだ。警察側にも反省すべき点は多い」などとの書き込みもみられる。