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木村誠「20年代、大学新時代」

本当に「稼げる大学」とは?医学部の有無&大学発ベンチャーが重要に

文=木村誠/大学教育ジャーナリスト
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東京大学の安田講堂(「Wikipedia」より)

「稼げる大学」というフレーズがにわかに注目を浴びている。といっても、政府が露骨にこの言葉を使っているわけではない。

 8月に開かれた政府の総合科学技術・イノベーション会議では、各大学に産業界や公的機関などの外部から人材を招いて意思決定機関を設け、世界トップレベルの研究開発に向けて経営力向上を図る方針を決めた。時事通信がそのニュースの見出しに使ったのが、「稼げる大学」である。だいたい日本経済の沈下を食い止められない産業界などの人材が、世界トップの科学技術を目指す大学経営へのアドバイスが可能だろうか、という疑問は残る。

 その点、「稼げる大学」は、せいぜい自分の食いぶちぐらいは自分の力で稼げ、というニュアンスでおもしろい。このような意見は以前からあった。新自由主義の論客である竹中平蔵元総務相は、ことあるごとに「大学も自分で稼ぐ努力をすべきだ」と主張してきたし、財務省の大学関係予算を担当する主計官だった神田眞人現財務官は、「イギリスの大学などに比べ日本の大学は収入を増やす努力が足りない」と指摘していた。

 もちろん、それらの「声」は大学人の強い反発を呼んだ。高等教育の無償化が進む中で学費の値上げは安易にできないし、リストラで人員削減をした企業経営者が敏腕と呼ばれる産業界とは、そもそもよって立つ基盤が違う。研究のコストもどんどん上がるが、それをケチれば世界トップレベルの研究成果は遠のくばかりである。

10兆円規模の大学ファンドは期待できるのか

 そこで政府が思いついたのが、10兆円規模の「大学ファンド」である。研究力の低下につながる、世界に通用する論文数の減少への危機意識が背景にある。博士課程の大学院生の減少を引き起こす、若手研究者のポスト不足や研究者の任期付き雇用の増加などの現状を打開するためにも、大学の資金力を高める必要がある、ということだ。

 フレームとしては、JST(科学技術振興機構)に大学ファンドをつくり、その運用益を活用する。政府出資5000億円、財投融資4兆円でスタートし、早期に10兆円の運用元本にする予定だ。スケールが大きいように見えるが、運用益であるから、実際の支出資金はその数パーセントにすぎない。

 将来的には、各大学がそれぞれ自らの資金で運用を目指すというから、大学ファンドはその呼び水のようなものだろう。その資金を調達できるのが、すなわち「稼げる大学」なのだ。

 といっても、私立大学と国公立大学では収入構造が違う。国立大は国からの運営費交付金が収入全体の3~4割を占め、入学金や授業料は1割強、付属病院の収益で2~3割というのが平均ケースとなっている。私立大は入学金や授業料が収入の6割前後を占め、他に国および地方公共団体からの私学助成などがある。そのため、私立大は学生数減の影響を受けやすく、地方の私立大では定員割れで赤字続きの例も少なくない。公立大は地域の個別事情によるであろうが、公金のウェイトが高いという点では国立大に近い。個々の大学で稼ぐための条件が違うのだ。

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