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牧野知弘「ニッポンの不動産の難点」

東京都区部は平均7千万円超…新築マンション価格「うなぎ上り」の報じられない理由

文=牧野知弘/オラガ総研代表取締役
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「Getty Images」より

 新築マンション価格がうなぎ上りである。不動産経済研究所の調査によれば、2020年、首都圏1都3県で供給された新築マンションの平均価格は戸当たり6083万円と、ついに6000万円台の大台を超えた。1平方メートル当たり単価でも92.5万円。坪当たりにして305.7万円。1平方メートル当たり初の90万円台、坪当たりでも初の300万円台の大台への突入である。東京都区部に限ってみれば、その価格はなんと7712万円だ。マンションはもはや一般庶民にとっては高嶺の花といってもよい存在になっている。

 リーマンショック前の2007年に4644万円だった首都圏1都3県における新築マンション平均価格は、この14年間で31%もの上昇を示した。

 一方で我々の収入は値上がり分だけ増加しただろうか。厚生労働省が発表する我が国の1世帯当たりの平均所得金額は2007年から18年の間に556万円から552万円と、残念ながらほぼ横ばいで推移している。財布の中身はちっとも増えていないのに、買いたいマンションの価格だけが一方的に値上がりしているという構図になっているのである。

 これでは新築マンションの購入が辛くなるのは当たり前だ。なにせ新築マンションの価格は年収の11倍、都区部ならば14倍もするのだから。この勢いのままでいけば、やがて新築マンションは我々一般国民の手の届かないところに行ってしまうのではないかと不安に駆られる気持ちもうなずける。

 年収があがらないのに家の値段だけが上がる。日本は人口増が止まったどころか、2010年以降は減少に転じた。首都圏への人口流入も明らかに鈍り始め、コロナ禍もあって東京都の人口も転入よりも転出が多い社会減の状況が8カ月連続するなどの事態が起きている。

誰に対して売っているのか?

 ここで私たちが冷静に考えなければならないのが、では「こんなにお高い」マンションを買っているのは誰なのかということだ。

 面白いデータを示そう。2004年当初、首都圏1都3県の新築マンションは8万5429戸が供給されていた。ところが20年はコロナ禍の影響があったとはいえ、2万7228戸と3万戸割れになっている。コロナ前の19年でも3万1238戸だ。首都圏における新築マンション供給戸数はこの15年あまりの期間で、なんと3分の1に縮小している。またこの間、新築マンションを供給するデベロッパーの数は4分の1に減少している。

 新築マンションマーケットは、大相撲でいえば、土俵が3分の1に小さくなって、これまで前頭14枚目までで競っていた力士が、小結以上だけで相撲を取っている状況にある。よく新築マンション業界では、メジャー7(三井、住友、三菱、野村、東建、東急、大京)などと称しているが、残った彼らで小さくなったケーキを分け合っているのが新築マンションマーケットの実態だ。

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