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藤和彦「日本と世界の先を読む」

石油ショック、再来の兆候…原油価格が在庫急減で高騰、シェールオイル枯渇の鉱区も

文=藤和彦/経済産業研究所コンサルティングフェロー
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「gettyimages」より

 米WTI原油先物価格は10月20日、7年ぶりに1バレル=84ドルをつけた。OPECとロシアなどの産油国からなるOPECプラスが協調減産を続けていることから、経済協力開発機構(OECD)加盟国の8月時点の原油在庫は過去5年平均を大幅に下回っている。日本をはじめ北半球の気温が低下し始めたことで、需要期の冬場を前に需給逼迫の懸念が実感として警戒され始めている。

 このことが特に意識されているのが米国だ。WTI原油の受け渡し拠点のオクラホマ州クッシングの原油在庫は3年ぶりに低水準となった。昨年4月にWTI原油の在庫を持てあましたトレーダーたちが投げ売りをしたことで価格が一時マイナスになるという異常事態が発生したが、1年半で様変わりだ。「このままのペースで行けば、あと2カ月で在庫が底をついてしまう」との懸念が生じており、WTI原油価格の上昇が続くとの見方は強まるばかりだ。

 世界最大の原油消費国である米国の足元の石油製品需要は日量約2183万バレルと強く、原油価格が1バレル=80ドルを超えても需要が圧迫される兆候が見られない。石油製品需要の約半分を占めるガソリン消費も夏場の需要のピークが過ぎた後に再び上昇している。

 需要とは対照的に供給は伸び悩んでいる。米国の直近の原油生産量は日量1130万バレルとコロナ禍以前のピークよりも約200万バレル少ない状態が続いている。米エネルギー省によれば、11月のシェールオイル生産量は前月比7.7万バレル増の日量約822万バレルとなる見込みだ。石油掘削装置(リグ)稼働数が増加基調にあることから来年の増加速度が上がるとしているが、期待外れに終わる可能性がある。

 シェールオイルの生産性が最も高いエリアが枯渇しつつある鉱区が出てきており、現在のリグ稼働数の増加ペースでは既存井の生産減を補うことができなくなりつつある。資材価格の上昇も足かせとなっているが、何より問題なのは脱炭素社会という風潮の下、石油産業への投資が縮小していることだ。このような逆風を受け、シェールオイルは数年前のように原油価格が上昇すれば速やかに増産できるという「世界の原油市場におけるスイングプロデユ-サー(価格の安定を図るための調整役)」ではなくなりつつある。

 加えて天然ガスの世界的な価格高騰を受けて原油を代わりに使う動きが活発化している。ゴールドマン・サックスが9月に公表した報告によれば、世界全体で日量200万バレル近い原油需要が追加発生する可能性があるという。需給の変動規模が100万バレル単位になれば相場は急変する。

OPECプラスは増産に慎重

 このような状況を危惧したバイデン政権はOPECプラスに対してさらなる増産を要請しているが、OPECプラス側は少なくとも年内は現行の毎月日量40万バレルの増産ペースを維持するとみられている。サウジアラビアのアブドラアジズ石油相は20日、米国からの増産要請に対して「OPECプラスの原油増産は世界的な天然ガス危機を解決することはできない」として段階的な増産政策を擁護する姿勢を堅持した。

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