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阿武町の誤送金、返金が困難な理由…オンラインカジノ「出金条件」が壁か

文=Business Journal編集部
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スマートフォン上のオンラインカジノの画像
阿武町が誤送金した4600万円を男性はオンラインカジノで使ったという(Getty Images)

 山口県阿武町が新型コロナウイルス対策の10万円給付事業で誤って、同町の住民男性(24)に4630万円を送金した問題で、この男性が謝罪と返金の意志を示していることが、FNNプライムニュース(フジテレビ系)のスクープでわかった。複数の報道によると男性は「ネットカジノ(オンラインカジノ)に使った」などと説明しているのだが、使途の全容はいまだに不明だ。警察関係者は「オンラインカジノにいったん入金したものを手付かずで取り返すのはかなり難しい」と語り、男性による返済が難航する可能性を示唆した。

 FNNが配信した記事『【独自】4630万円誤送金で34回の出金確認 男性「少しずつでも返していきたい」謝罪と返金の意向』では関係者の話として「入金があった4月8日のうちにおよそ67万円の出金が行われ、4月11日には8回にわたって繰り返されるなど、4月19日までに、34回の出金が確認された。1回で400万円が、別の口座に振り込まれたケースもあった」と出金の経緯を説明。代理人弁護士の談話として、「(男性は)『お金を使ってしまったことは大変申し訳なく思っている。少しずつでも返していきたい』と話している」と報じた。

 男性が金を使ったとされるオンラインカジノ。カリブ海のオランダ自治領キュラソーや地中海の島国マルタ、イギリスなどギャンブルが合法な国のライセンスを取得した上で、それぞれの国の事業者が運営していることが多いという。パソコンやスマートフォン、タブレットなどからルーレットやポーカー、バカラ、ブラックジャックなどに金を賭けることができる。

「賭場が日本国外にある」「外国政府の公認を受けている」などという理由から日本の警察も管轄外で、公営ギャンブル以外の賭博が禁止されている日本でもプレイすることができる。ただし、プレイするのには基本的に米ドルなど外国通貨が基本で、入金・出金処理も外国通貨の単位で行われる。決済にはクレジットカードやビットコインなどの仮想通過が使われているという。

 神奈川県警で違法賭博などの取り締まり経験のある元捜査員は、オンラインカジノと日本の警察を取り巻く状況を次のように語る。

「いわゆる『賭博及び富くじに関する罪』と言われる刑法185条から187条で規定されている犯罪行為に抵触するのは、例えばマルタ所在を謳いながら実際のカジノの運営主体が日本にあった場合などがそれに当たると思われます。

 また警視庁は昨年10月、東京都大田区西蒲田のインターネットカジノ店を摘発し、店舗責任者などを常習賭博容疑などで逮捕しました。このケースの逮捕容疑は、この店が海外のカジノサイトに接続したパソコンを複数設置し、客とポーカーなどの賭博をしたというものでした」

オンラインカジノに入金済みの金は取り戻せるのか

 阿武町のケースではオンラインカジノに全額を突っ込み、“オケラ”になってしまったということなのだろうか。仮にカジノへの入金分が残っているのなら、それだけでも即時返済はできないのだろうか。前述の元捜査員は語る。

「オンラインカジノへの『入金分』を自治体が差し押さえるというのは、かなり難しいでしょう。その『お金が日本国内にある』わけでもなく、現金や不動産、自動車やブランド品といった明確な『資産』に比べグレーだからです。仮に残金があるのなら、男性自ら出金処理をする必要があるでしょうね。

 一方、オンラインカジノには出金条件を課しているケースが多々あります。例えば、日本でも利用者が多いとされるキュラソーの大手オンラインカジノは、出金条件として『入金した金額分を賭けで使用済みであること』を明記しています。つまり利用者が1000ドル入金した場合、カジノで1000ドルを賭けていなければ出金できないということです。

 最初に700ドルを賭けて負け、怖くなって残った分を出金しようとしても、あと300ドルを賭けない限り出金できないということです。この条件は、外国政府のライセンス制度に定められていて、国際的な犯罪組織など不法な資金洗浄防止のために設けられたとものだといいます。勝てば元手の1000ドルに加え、勝利金が手に入るわけですが、どんなに勝率の良い賭けであっても、最終的に胴元が儲かる仕組みになっていなければ、成り立たないのが賭場というものです。

 オンラインカジノには決済方式ごとに入金限度額もあり、一挙に全額(4630万円)を突っ込むのは難しいでしょう。資金を逐次投入し、各回の元本を回収しようとして、負けが混んだのなら、回数を重ねた分だけ減っていきます。全額賭けてプラスになっていれば、さっさと返済しているでしょうし、『少しずつでも返していきたい』との報道を見る限り、少なからず損失を被ったということではないでしょうか。

 仮にオンラインカジノ上にまだ『賭けていない金』が残っていたとしても、賭けない限り出金できない。負ければさらに減るし、町への返済のため『残っている金で、もう一度カジノでギャンブルをして勝つ』というわけにもいかないでしょう。

 今後の返済に向け、カジノなどのギャンブルではなく、しっかり働いて稼いでくれるといいのですが」

(文=Business Journal編集部)

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