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東大へ内部進学できる?知られざる東大「附属」中等教育学校の実態…超独特の入試

取材・文=文月/A4studio
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東京大学教育学部附属中等教育学校のHPより

 早稲田大学、慶應義塾大学、MARCH(明治、青山学院、立教、中央、法政)などの大学附属校は中学受験の志望校として人気が高い。特に近年の中学受験では、コロナ禍の影響による社会情勢への不安、中堅校の難化、大学入試の競争激化などの理由により、附属校の受験者数が右肩上がりで増加するという“附属校ブーム”が顕著であった。

 しかし、日本のトップである東京大学にも附属校があることは、あまり知られていないのではないだろうか。東京大学の附属校というと、かなり難関なイメージがあり、受験対策もされていそうだが、不思議と中学受験の話題にはさほど上らない。そこで今回は大学ジャーナリストの石渡嶺司氏に、東大附属がどのような学校であるかについて詳しく話を聞いた。

東大へのエスカレーター式の内部進学はない

「正式名称は『東京大学教育学部附属中等教育学校』と言います。1921年に旧制東京高等学校として設立し、48年に新制中学校として再編。翌49年に東京大学に包括され、51年に教育学部の附属になりました。そして、2000年には中等教育学校として生まれ変わり、現在に至ります。

 ちなみに中等教育学校とは、1998年の学校教育法改正により登場した前期課程3年、後期課程3年に分かれる6年制の中高一貫校です。それぞれ中学校、高校の学習指導要領が適用され、前期課程で高校の学習内容を先取りして学ぶことも可能なんです。他の学校でいうと、トヨタ自動車、JR東海、中部電力が賛同して設立した私立の海陽学園も中等教育学校として知られています。

 また中等教育学校では基本的に高校募集が行われていません。そのため、6年間ずっと同じ仲間と共に生活していくことになります。なおラ・サールや開成のような有名校も中高一貫校ですが、こちらは高校募集を行っている“併設型”の中高一貫校となるので、厳密には中学と高校は別々の学校なんです」(石渡氏)

 次に東大附属の偏差値と大学進学実績について解説していただこう。

「首都圏模試センター発表によると、東大附属の偏差値は64。開成の78、筑波大学附属の75などのトップ校の偏差値と比べると低い数字となっています。

 ですが、国公立大学への進学者は過去3年で60人であり、私立の大学も青山学院が12人、慶應義塾が9人、上智が6人とまずまずの合格実績を誇っています。ですが、短大や専門学校への進学者もいるので、卒業後の進路はバラバラといった印象です」(同)

 大学進学実績の話で気になるのがやはり東大への進学。どうなっているのだろうか。

「実は東大附属に入学したからといって、エスカレーター式で東大に進学できるわけではなく、残念ながら同校から東大へ進学したいのであれば他校生と同じように、普通に受験するほかありません。なお東大附属のホームページを見てみると、過去3年間で東大の合格者はわずか3人でした」(同)

双子、三つ子向けの独自の入試形態とは?

 東大附属の入学試験は他の中学受験とは違う独特なものであるという。

「入学試験では作文、実技、そして適性検査という試験が課されます。適性検査とは、東大附属の公式サイト曰く、『総合的な知識や体験、実技などにかかわった』試験なのですが、なんと2020年まで過去問が公開されていませんでした。また21年にようやく問題の持ち帰りも認められたので、長い間謎に包まれた試験だったのです。

 そのため、東大附属の場合、普通の中学受験のように過去問を解いて出題傾向を探る、という中学受験王道のやり方が通用しなかったんです。また、昨年放送されていた日本テレビ系ドラマ『二月の勝者―絶対合格の教室―』のように、模試で良い点数をとって合格判定をもらう、というような志望校合格までのわかりやすいラインもありませんでした。

 このようにかなり特殊な試験、かつ東大へのエスカレーター式の進学ができないという理由で、中学受験の選択肢から外していた家庭が多かったのだと考えられます」(同)

 続いて、東大附属にしか見られない特徴について解説してもらおう。

「東大附属の最たる特徴といえば、双生児枠でしょう。同校では70年以上にわたる双生児の研究が盛んであり、入学検査で双子や三つ子などの多胎児専用の枠を設けているんです。その評価基準も独特で、普通の入試であれば受験者ひとりの点数で合否を決めるのが当然ですが、東大附属の双生児枠では、双子が獲得した点数の平均点で合否が決まるのです。たとえば、双子のA君とB君がそれぞれ100点、80点獲得したとすると、平均値の90点で判断されることになります」(同)

 なお同校の双子に関する研究は、論文や学会発表だけではなく、これまでに何冊か書籍も出版されているとのことだが、同校は多胎児の子どもを持つ親にとって安心できる環境であるという。

「普通、他の学校であれば、双子や三つ子は注目の的になりますし、万が一、悪目立ちしてしまえばいじめの対象になってしまうかもしれません。ですが、同校では1学年120人のうち双子の生徒が10組も存在し、クラスが同じになることもありません。そのため、双子の存在が特に目立つことはないので、安心できる保護者は多いかと思います」(同)

 だが双生児への積極的な取り組みがある一方で、次のような課題もあるという。

双生児枠は双子、三つ子などの生徒にはメリットがあるものの、一般選抜の受験者、ないしは保護者からすると不平等に感じてしまう制度です。そのため、“他の学校を受ければいい”といった発想になりやすく、同校を志望する生徒が減っていき、結果的に知名度が低くなってしまうのだと考えられます。

 個人的には、東大への内部進学者枠を作れば、同校にメリットを感じ、興味を抱く生徒、保護者は多くなるとは思いますが、内部進学者枠を作れない事情が何かあるのかもしれませんね」(同)

 附属校は、有名大学のブランド力に惹かれ志望する家庭も多いが、東大附属の場合、そのネームバリューにとらわれない独自の方針で学校を運営していることがわかった。双子の子供を抱える家庭や、教育方針などに興味がある家庭は、同校も選択肢に入れてみてもいいかもしれない。

(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
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