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タワマン20階でも地上からの騒音で眠れず…隣同士の騒音トラブル多い意外な理由

文=A4studio
タワマン20階でも地上からの騒音で眠れず…隣同士の騒音トラブル多い意外な理由の画像1
タワーマンション(「gettyimages」より)

 9月15日、WEBサイト「Hint-Pot」に掲載された、タワーマンションに住む人々を襲う地上の騒音問題の記事が話題を呼んでいた。

 書かれていたのは、高齢の母とタワマンの20階台で暮らし始めたとある女性のエピソード。エアコンが苦手なため暖かい時期になり窓を開けるようになったところ、近隣の学校から聞こえる生徒たちの声が異様に響くことがわかり、寝たきりの母親はあまりの騒音に安眠できず、鬱のような状態になってしまったとのことだった。

 タワマンの上層階ともなれば騒音問題とは縁遠い静謐な住まいのイメージがあるが、実は地上の騒音が気になるケースは少なくないのだろうか。そこで今回は、数多くの一級建築士を擁する「さくら事務所」所属の不動産コンサルタント、土屋輝之氏に、タワマンで起こりうる騒音問題について詳しく話を聞いた。

外の騒音が聞こえるのはある意味当然?

 土屋氏いわく、「タワマンの20階はおおよそ地上60~70mの高さ」とのことだが、20階以上の上層階に住んでいても、地上の騒音は気になってしまうものなのか。

「タワマンというものは、住まいとして交通などの利便性を存分に追求したものになっています。ですから駅から遠い場所には建っていませんし、駅前のタワマンであれば地下鉄でない限り電車の走行音が聞こえます。遮る物がないので、地上付近の音は高層階になってもけっこう聞こえてしまうものなんですよね。

 私自身、調査の一環で40階以上のタワマンに赴くことが多々ありますが、近隣の学校の生徒たちの声は割と聞こえてきますし、自動車や鉄道の音もまったく聞こえないということはありません。ですから20階の高さで窓を開けていたとなると、うるさいと感じるレベルの騒音が聞こえることも珍しくないでしょう」(同)

 一般的に「徒歩1分」という表記は80mで換算されているので、20階の60~70mの高さは直線距離で徒歩1分未満。遮蔽物がなければ徒歩1分未満の場所の音が聞こえるというのは、当然といえば当然か。

「そもそも、タワマンは窓を開けながら快適に過ごせる立地や造りにはなっていない場合が多いんです。どちらかというと駅近で喧騒な場所にあるため、ビジネスホテルの環境に似通っているからです。

 また、そういった外部からの音がうるさいと感じるかどうかは、それ以前に住んでいた環境で、どの程度の騒音耐性がついているかにもよるでしょう。例えば線路脇のアパートに住んでいた方は、おそらく多少の電車の音は気にせずに生活できると思うんですが、閑静な住宅街に住んでいた方は、電車の音のような市街地の騒音が気になって仕方ないというように、もともとの騒音耐性の差でタワマンの音の感じ方も違ってくるでしょう」(同)

軽量化が不可欠なタワマンは音漏れも?

 タワマンの騒音は外部の問題だけではないと土屋氏は続ける。

「タワマンと聞くと、高層建築物だから堅牢な造りで、防音対策がしっかりしていると思う方も少なくないかもしれません。しかし、実は建物を軽量化するための工法が採用されている関係で、従来の中層の鉄筋コンクリートのマンションよりも、上下階や隣同士の騒音トラブルは起こりやすいのです。

 一般的なタワマンだと、現場で鉄筋コンクリートの型枠を組み、そこにコンクリートを流し込んで作っていきます。床はハーフPCといわれる工法を使っていて、工場でおおよそ半分ぐらいの厚みをコンクリートで作り、パネルにして現場に運びます。そこに、現場で梁や柱を組み立て、工場で作ったパネルを敷き詰めた上からコンクリートをもう一度流し込んでいるんです。また、壁は軽量発泡コンクリートといわれている強度の低いものを使っています。

 タワマンほどの高層の建物を成立させるには構造的に軽量化する必要があるからなんですが、このような軽量化する工法によって、一般的なマンションよりも実は上下左右の音が聞こえやすくなっているタワマンは多いのです」(同)

 ちなみに、それならば閑静な立地にある中層マンションに引っ越せばすべて解決と思うかもしれないが。

「中層の鉄筋コンクリートのマンションでも、周辺が静かすぎるゆえに上下階や隣の部屋の音がよく聞こえてしまうケースもありえるんです。それらを想定したうえで申し上げると、音に対して敏感な方はそもそもマンション自体を選択肢から外すということも、検討されたほうがいいかもしれませんね。

 それでもマンションがいいということであれば、その住まいの周辺環境で季節によって窓を開けたときにどんな音がするのかなど、事前に調べておくべきでしょう。終の棲家として考えるのであればなおさらで、内見は一度だけではなく複数回行くことを前提にして、平日と週末、時間帯も午前と午後に分け、ある程度曜日や時間をずらして見に行かれることをおすすめします」(同)

 美しい眺望や豪奢な造り、充実した設備が魅力のタワマンは、そういったメリットに目がいきがちで、周辺環境の音といったデメリットのチェックを、つい失念してしまうかもしれない。だが、タワマンの立地や構造を考えると、さまざまな騒音問題が発生するリスクが決して低くないため、しっかりと想定しておく必要があるのだろう。

(文=A4studio)

A4studio

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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