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プログラミングをするプログラマー、需要が激減か…すでにノーコードが当たり前に

取材・文=文月/A4studio
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「gettyimages」より

 AI(人工知能)の台頭によって仕事が奪われる――このようなSF的ディストピア世界の到来を予見する人は多い。たとえば、2022年ごろから流行した「Stable Diffusion」「Midjourney」などのAI画像生成サービスは、そのイラスト生成の精度の高さ、手軽さからイラストレーターの仕事を奪うのではないかといわれていた。人類の歴史上、写真、映像、コンピュータなどの登場によってなくなった仕事も多いが、今存在する仕事もAIの発展によっていずれなくなる可能性はある。

 そして、それはクリエイター界隈に限らず、エンジニア、プログラマーの世界でも起こる可能性があるという。ニュースサイト「Business Insider Japan」が昨年12月1日に報じたところによると、グーグルが「AIにコードの書き方を教える」極秘のプロジェクトを進行中だという。このプロジェクトでは、AIがプログラミングスタイルを学習し、それに基づいて新しいコードを書くようエンジニアが設計しているとのことだ。

 近年のIT業界は人手不足といわれて久しい。レバテックの発表した「ITエンジニア・クリエイター正社員転職・フリーランス市場動向 2022年7月」でもITエンジニアの正社員転職の求人倍率は15.8倍とかなりの売り手市場だ。しかし、技術の進歩が進めば、プログラマー、エンジニア需要にも陰りが見えてくるかもしれない。

 果たして今後、IT業界にどんな変化が訪れるのだろうか。今回はITジャーナリストの神崎洋治氏にAIによるコーディングの実情について話を聞いた。

エンジニアの仕事はAIを駆使することにシフトしてきている

 すでに今ではエンジニアがコードを書くこと自体、減りつつあるという。

「現在のIT業界では、コーディングAIが台頭し始めており、エンジニアという仕事はそのAIを駆使し、場面ごとに使い分ける仕事に変わりつつあります。ですからエンジニアというよりも、データサイエンティストという言い方が適切かもしれません。現状の市場を見てもAIを適切に使える、さらに改良を通して育てられるスキルを持った人材に需要が傾いているんです。したがって、コーディングを主に行うプログラマーは、だんだんと需要が減っていくでしょう。

 そして大手IT企業でもコーディングAIの開発は顕著です。なかでも、マイクロソフトではグーグルに先立ち、ローコード・ノーコード(プログラミングの作業が少ない、ないしはまったくない状態でコーティングする方法)でアプリ、ウェブサービスを開発するコーディングAIを開発してきました」(神崎氏)

 マイクロソフトは2016年から「Power Apps」という簡潔なコーディングでウェブアプリを開発できるサービスを発表。そして2021年からは、人工知能を研究するNPO「OpenAI」と共同で、AIがコードを自動生成するツールの開発プロジェクトを開始した。

「近年のマイクロソフトの動きのように、ノーコードで自動的にコーティングしてくれるサービスはIT業界では当たり前になりつつあるんです。具体的には、『こんなコードを書いてほしい』とテキスト文章を書くだけでAIが自動的に判断し、お題に沿った最適なコードを生成してくれます。

 現在、こうしたAIの機械学習では、プログラミング言語の種類を問わず大量にコーディングのデータを流し込むので、対応できない言語はほぼないと考えています。しかし、それでも『どういったプログラムを構成したいのか』を考えるのは人間ですし、AIが勝手に人間のほしいものを判断し、サービスを開発する段階にまでは至っていません。

 そして、AIもだんだんと時代の流れや作業の変更などにより劣化していくものなので、新しいデータを投入してどんどんアップデートしていく必要があります。こうしたリスキリングをしていくことが、今後のエンジニア、データサイエンティストの課題となってくるでしょう」(同)

 かつて2000年ごろにも職場にコンピュータが導入され、Word、Excelなどのソフトが一気にビジネスの現場で利用されるようになった。こうした便利なソフトが登場したものの、大々的に人間の職が奪われることはなく、むしろ仕事は効率化し楽になった。エンジニアの世界でも、AIの台頭によって仕事が楽になるかもしれない。

プログラミングが義務教育となった小学校でもコードは書かない

 こうしたITの変化は業界のみならず、教育の現場にも影響を及ぼしている。学習指導要領の改訂により、2020年から小学校、21年から中学校、22年から高校でプログラミングの授業が必修化して世間の関心を集めた。なかでも、小学校の授業内容に注目してほしいと神崎氏は語る。

「小学校のプログラミング授業では、アメリカのMITメディア・ラボ開発の『Scratch』というプログラミング言語を用いて学習することが多いです。Scratchでは、コードを書くことなく、予めコードが組み込まれたテキスト文章のブロックをドラッグ&ドロップの操作で組み合わせて、プログラミングを行います。『右に進む』『90度回転する』といったブロックをつなげて、画面上でロボットを動かしたり、アニメーションを作ったりしてプログラミングの一連の作業を学ぶんです。そのためノーコードのプログラミング的な思考は小学校である程度身に付くわけです。

 こうしてプログラミングの大まかな流れを学んだ子どもたちが、中学校、高校でより細かいプログラミングの知識を学んで、いずれは社会人になります。これはつまり、ある程度プログラミングの知識がある人々が社会に出ることを意味します。一昔前は『文系はプログラミングに向いていない』という考え方もありましたが、そうした考え方はすでに古く、着々と新しい世代に向けての準備は進められているんです」(同)

 ITを取り巻く環境は急速に変化が進むなか、AIを活用しつつも、それにとらわれすぎない業務改善が求められるという。

「AIがどこまでのことをできるのか、これを見極めることが肝要になってきます。我々が普段、Word、Excel、PowerPointなどのソフトがどのような特徴を持って、どんな仕事に適しているかを理解して利用しているのと同じように、業務で使うAIの概要を把握しなければ、当然それを使いこなすことはできません。経営者やプロジェクトリーダーはもちろん、エンジニア一人ひとりが理解していくべきことですね」(同)

 AIの発達によって、ここ数年でガラリと変わったIT業界。そんなAIの特性を理解して活かしていける人材こそが、業界で重宝されていくのだろう。
(取材・文=文月/A4studio)

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エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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