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住宅ジャーナリスト・山下和之の目

過去最低0.1%台の住宅ローン登場、年35万円も返済額が低く…重大リスクも

文=山下和之/住宅ジャーナリスト
過去最低0.1%台の住宅ローン登場、年35万円も返済額が低く…重大リスクもの画像1
「gettyimages」より

 変動金利型の住宅ローンは多くの銀行で0.3%台、0.4%台で利用できますが、2023年4月、ついに0.1%台の超低金利の住宅ローンが登場しました。auじぶん銀行のキャンペーン金利ですが、これでますます固定金利型との金利差が大きくなり、返済負担の差も拡大、借入額4000万円だと年間の負担が固定金利型より30万円以上軽くなります。

住宅ローン利用者の8割前後が変動金利型を利用

 住宅ローンの金利タイプには変動金利型と固定金利型があり、変動金利型は短期金利の影響を受け、固定金利型は長期金利に連動します。2022年から世界的な政情不安などの影響もあって長期金利が上昇し、わが国でも固定金利型の住宅ローン金利の上昇が始まっています。固定金利型の代表格である住宅金融支援機構と民間提携のフラット35の金利は、2019年9月には1.05%だったのが、2023年3月には1.96%まで上がりました。2023年4月には若干下がりましたが、それでも3年半ほどの間に1%近く上がったわけです。

 それに対して、変動金利型は短期金利が据え置かれているため、メガバンクの基準金利は2.475%が10年以上続き、銀行間の金利引下げ競争によって、最優遇金利は0.3%台、0.4%台で利用できるようになっています。固定金利型と変動金利型にはこれだけの金利差があるのですから、返済負担の違いも大きく、住宅ローン利用者の8割前後は変動金利型を利用しています。

固定金利型を希望する人が増えている

 しかし、2023年4月、日本銀行の総裁が交代し、長く続いた大規模緩和方針が見直され、いずれ金融引締めに転じるのではないかという見方が強まっています。金融引締めで短期金利が引き上げられると、短期金利に連動する変動金利型の住宅ローン金利も上昇する可能性があります。そのため、最近は金利上昇リスクを回避するため、固定金利型住宅ローンを希望する人が増えているといわれています。

 住宅金融支援機構が住宅ローンを利用してマイホームの購入を考えている人を対象にして行った調査によると、変動金利型を希望する人は34.5%にとどまり、固定金利型希望者のほうが多くなっています。多少金利が高くても、借入後のリスクがない固定金利型を利用したほうがいいのではないかと考える人が増えているのです。

 変動金利型には金利が低く、返済額を少なくできる分、借入後のリスクがありますが、これまでは長い間、超低金利で据え置かれてきたので、リスクを感じる人が少なかったのですです。それが、そろそろ危険かもしれないと考える人が増えているわけです。

金利0.1%台で変動金利型が人気を取り戻す

 そこに登場したのが、auじぶん銀行の0.1%台の変動金利型住宅ローンです。auじぶん銀行はネット専業銀行であり、リアルの店舗を持たないため、各種経費がかからず、金利を低く設定できるというメリットがあります。これまでも、メガバンクなどが0.3%台、0.4%台の金利を提示するなかで、0.2%台の破格の金利設定を行ってきました。超低金利によって、リアルの店舗が充実し、営業力のあるメガバンクなどに対抗してきたのですが、ここへきて、ついに0.1%台の金利の住宅ローンを出してきました。金利リスクがクローズアップされ、人気が低迷しそうな変動金利型を、金利引下げによってもう一度見直してもらおうという狙いがあるのかもしれません。

 同行の店頭表示の基準金利は2.341%なのですが、図表1にあるように通常はその金利から1.952%引き下げて、0.389%の金利が適用されます。さらに、「auモバイル優遇割」と「じぶんでんき優遇割」の適用を受けられる人は、合計0.1%の金利引下げが適用され、0.289%になります。0.2%%台の金利が適用されるのは、この仕組みによります。

金利0.1%台で変動金利型の人気を取り戻す

 その上で、2023年4月から6月末まで、「借換え金利引下げキャンペーン」が実施されます。それによって、やはり図表1にあるように、2.341%の基準金利が金利引下げによって0.296%に下がります。0.2%台で利用できるのはそれまでは「auモバイル優遇割」と「じぶんでんき優遇割」の適用を受けられる人だけだったのですが、借換えの人であれば、自動的に0.2%台の金利が適用されるようになったわけです。

 しかも、ここでも「auモバイル優遇割」と「じぶんでんき優遇割」が実施され、優遇割によって0.1%の金利引下げが実施され、適用金利は0.196%になります。auじぶん銀行では、0.1%台の金利は、auじぶん銀行初のこととしていますが、恐らく、わが国でも初めての0.1%台の住宅ローンではないでしょうか。

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月々の35万円近く軽減されるケースも

 これによって、どれくらい負担が軽くなるのでしょうか。借入額4000万円、35年元利均等・ボーナス返済なしの場合で試算すると図表2のようになります。メガバンクなどで利用できる0.375%の変動金利型だと、毎月返済額は10万1639円で、年間返済額は約122万円です。それが、0.196%だと毎月10万円を切って、年間返済額は118万円ほどに減少します。年間では4万円近く負担が軽減されます。

 さらに、固定金利型と比較すると一段と違いが明確になります。全期間固定金利型のフラット35の2023年4月の金利は1.76%で、毎月返済額は約13万円近くに達し、年間返済額は150万円を超えます。0.196%と比べる、毎月では3万円近い差で、年間では実に35万円近い負担の違いになります。諸物価高騰の折、この負担軽減メリットは大きいのではないでしょうか。

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住宅ローン | auじぶん銀行 (jibunbank.co.jp)

5年後には最大25%返済額が増えるリスクも

 これだけの違いがあれば、多少のリスクを覚悟しても変動金利型を利用したくなりますが、そのためには、図表3のような条件を満たす必要があります。auモバイルを利用している人であれば比較的手軽に利用できるかもしれませんが、そうでない人は回線変更の手間ヒマがかかるので注意しておく必要があります。と同時に、変動金利型を利用するときには、改めて変動金利型の金利リスクをシッカリと確認しておきましょう。変動金利型は、借入後には半年に1度金利が見直され、5年に1度返済額が見直されます。金利が上がれば、返済額が増えてしまいます。

 返済額増額の場合には、増額率を25%までに抑えるというルールがありますが、逆にいえば、5年後には返済額が最大では25%増える可能性があるということです。返済額見直しまでの5年の間の金利変化は、毎月返済額はそのままに、毎月返済額の利息分と元金分を調整することで対応します。金利が下がれば利息分が減って元金分が増え、当初より元金の減り方が早くなります。

図表3 au金利優遇割の適用条件
・auモバイル優遇割の適用条件
(1)auじぶん銀行口座へ登録したauIDの回線がauの家族割プラスに加入していること
(2)(1)の回線を含め、家族割プランのカウント対象が2回線以上存在していること
(3)auじぶん銀行の住宅ローンを借り入れること
(4)住宅ローンの適用判定日までに住宅ローン契約手続きが完了していること
・じぶんでんき優遇割の適用条件
住宅ローン手続申込完了までにauエネルギー&ライフ株式会社が提供する「じぶんでんき」を申し込むこと

変動金利型を利用するならより慎重な計画を

 反対に金利が上がると利息分が増えて、元金分が減ってしまいます。元金の減り方が遅くなり、なかなか元金が減りません。最悪の場合、「未払い利息」が発生して、約定通りに返済しているのに元金がまったく減らず、むしろ「未払い利息」という名の残高が増える恐ろしい事態になります。現在の経済環境下でそんなに大幅な金利上昇は考えにくいのですが、それでも5年後には最大25%返済額が増えるリスクがありますから、多少の増額に耐えられるような返済計画を立てておく必要があります。金利0.1%台の超低金利メリットを享受するためには、それぐらいの慎重な計画が欠かせません。

(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)

山下和之/住宅ジャーナリスト

山下和之/住宅ジャーナリスト

1952年生まれ。住宅・不動産分野を中心に、新聞・雑誌・単行本・ポータルサイトの取材・原稿制作のほか、各種講演・メディア出演など広範に活動。主な著書に『マイホーム購入トクする資金プランと税金対策』(執筆監修・学研プラス)などがある。日刊ゲンダイ編集で、山下が執筆した講談社ムック『はじめてのマンション購入 成功させる完全ガイド』が2021年5月11日に発売された。


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