時代の変化を知り、何が起きたかを考えることは、これからの時代を生きる人々にとって参考になる。そのことを動物と人との関係から考えるのが『都市のくらしと野生動物の未来』(岩波書店刊)だ。本書では、生態学者の高槻成紀氏が、自然から離れてくらす人が増え、動物の本当の姿や生き物同士のつながりを知る機会が失われている今、動物たちと向き合うためには何が必要かを自らの体験や科学的知見を通して紹介している。
「カラスは不気味」でも本当は…?
「タヌキはまぬけ」「カラスは不気味」といったイメージを持っている人は少なくないだろう。しかし、そうした勝手なイメージを持たず、生き物を正しく知ることは大切なことだ。たとえばカラス。ゴミ漁りをしたり雑食性があり、貪欲な食べ方をする。動物の死体を食べることもあり、死にそうな動物を攻撃して殺すこともあることから、昔の人はカラスを不気味な鳥と考えていた。
こうしたマイナスのイメージを持たれるカラスだが、動物学の対象として調べられたカラスの知能は優れている。公園の水飲み場の水道に来て、蛇口をひねって水を出して飲む。それどころか、水浴びをするときは蛇口を大きく回して出てくる水の量も変えるという。また、硬い殻のクルミを交差点の自動車が通るところに置いて、自動車が通り過ぎたあと、轢かれて割れたクルミの中身を食べたりもするそうだ。
カラスは、新しいものに出会ったときに工夫をして利用する「開発能力」が優れているのだ。「カラスは黒くてゴミを漁るいやな鳥」というイメージを持っているなら、自分で観察したり、本を読んだり、ネットで調べてカラスの実態を知ってみよう。カラスに対する見方はまるで違うものになるだろう。
このように、どんな動物に対してもマイナスのイメージ、偏見を持たないことが大切だ。都市部で生活をしていると、動植物と距離ができる。そうすると、マイナスのイメージばかりで捉えてしまうようになってしまう。動植物を正しく知る。それは彼らがどういう生き方をしているかということを知ることなのだ。
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人間と動物の関係がこれからどうなるのか。本書から動物たちと向き合うためには何が必要なのかを学んでみてはどうだろう。(T・N/新刊JP編集部)
※本記事は、「新刊JP」より提供されたものです。