新築マンションは多くの場合、完成前の青田での販売なので、実物を見ることはできませんが、中古マンションは実際に建物の外観から共用施設、そして居住部分の室内まで自分の目で確かめることができます。それだけに、どこを見ればいいのか、シッカリと頭に入れておきたいところです。
条件、外観や共有部分、室内設備をチェック
不動産情報サービスのアットホームでは、全国のアットホーム加盟店を対象に調査、「不動産のプロが選ぶ!『中古マンション購入時にチェックするべきポイント』ランキング」を作成しました。実際にマンションの売買に立ち合っている不動産のプロに、長く快適に住むためには、どんなポイントを中心にチェックしていけばいいのかを聞いています。見るべき部分が多いので、調査ではマンションの置かれている「条件面」「外観・共有部分面」「室内設備面」の3つに分けて、何を見るべきか、それぞれの分野ごとに重視すべきポイントを選んでもらっています。長年、マンションを見続けてきた人たちの評価ですから、これから中古マンションの購入を考えている人にとっては、たいへん参考になるデータではないでしょうか。
条件面で重視すべきは駅までのアクセス
まず、マンションの条件面でチェックすべきポイントは図表1のような結果でした。最も多くの不動産のプロが挙げたのは、「立地(駅までのアクセス)」の65.3%でした。次いで「管理費や修繕費の妥当性」の61.8%、「周辺環境」の58.6%などとなっています。何よりもマンションの置かれている環境、立地や周辺環境などを重視すべきであるということでしょう。「マンションは立地がすべて」という専門家もいるぐらいですから、さまざまな面で立地は重要です。生活の利便性に影響するだけではなく、将来的な資産価値を左右する要素にもなります。
マンションは戸建住宅に比べて駅からの徒歩時間が重視されています。東京カンテイの「マンション・一戸建て住宅白書2022(首都圏)」によると、新築マンションにおいては、徒歩5分以内にこだわって分譲される物件が大半で、徒歩10分を超える物件は極端に少なくなります。最近は都心志向が強まっていますから、なおさらです。特に首都圏では地下鉄などの公共交通機関が縦横無尽に通じていますから、徒歩5分以内がスッカリ当たり前になっています。それだけに、徒歩時間の長い物件は日常生活に不便するだけではなく、将来の売却時の資産価値にも大きく影響してくるでしょう。十分注意しておきたいところです。
駅近中古がますます評価されるかも
それに対して、戸建住宅には徒歩5分以内はあまりみられず、10分を超える物件が多くなっています。徒歩15分、20分といった物件も珍しくありません。マンションと戸建住宅では、徒歩時間に対する考え方が決定的に異なっているのではないでしょうか。しかも、最近は都心部などの人気エリアを中心に、駅近物件の開発が極めて難しくなっています。先の徒歩時間の調査を行った東京カンテイでは、「ここ数年来の用地取得難に加え、マンション価格の高騰と物価高によって購入者が駅近物件を入手しにくくなった」としています。
つまり、新築マンションでは徒歩時間の短い物件を取得することが困難になっているため、ますます中古マンションに対する関心が強まる可能性があります。新築では、駅近マンションを見つけることが難しくても、中古なら探すことができるのではないかと、中古に関心を持つ人が増えて、ますます「立地(駅までのアクセス)」が重視されることになるかもしれないので、念頭に入れておきたいところです。
共有部分では駐車場やエレベーターをチェック
次に、マンションの外観や共有部分面についてのチェックポイントとしては、図表2のような点が挙がっています。最も多かったのは、「駐車場の有無、管理状況」の75.5%で、「エレベーター(数や管理状況など)」が66.9%で続き、以下「駐輪場の有無、管理状況」61.6%、「ゴミ収集時間帯(24時間ゴミ出し可かなど)」が52.5%となっています。駐車場については、平置きなのか、機械式なのか、また住戸数に対して何%の駐車スペースが確保されているのかを確認しておく必要があります。クルマを持っている人だと、すぐに駐車場を確保できるかどうかは重要な問題です。空きがないと、近隣に確保しなければならず、たいへん面倒なことになりますし、コスト負担が高まる可能性があります。また、あまり運転に慣れていない家族がいる場合、機械式駐車場だと事故などの心配もあります。できれば、実際に駐車場に足を運んで、キチンと整理されているか、清掃が行き届いているかなども確認しておきましょう。
駐車場や駐輪場は物件を判断する情報の宝庫
実際にどんなクルマが停まっているかを見れば、どんな人たちが住んでいるのかをある程度推測できます。自分たちと同じようなレベルのクルマが多数停まっていれば、何となく安心できますし、反対に高級外車や改造車などが多数停まっていれば、少し不安になるかもしれません。また、駐車場に空きが多数発生していないかも、管理組合や管理会社などに確認しておくのがいいでしょう。駐車場の使用料は多くの場合、修繕積立金に組み入れられています。ですから空きが多数発生して、駐車場からの収入が減ったら、修繕計画を予定通りに実行できなくなってしまう可能性があるのです。最近は、クルマに乗らない人が増えているそうですから、特に注意しておきたい点です。
駐車場とともに駐輪場についても、足を運んで確認しておきましょう。乳幼児などを乗せる自転車用チャイルドシートのついた自転車が多数あれば、子育て世帯が多いと想像されますし、キチンと並べられているか、ゴミが散乱していないかなどで、住民のマナー意識などもある程度判断できるのではないでしょうか。不動産のプロが重視するように、駐車場や駐輪場はマンションの善し悪しを評価する上では、たいへん重要な情報の宝庫なのです。
エレベーターも実際に乗ってみて確認
エレベーターも重要です。最低でも50戸から60戸に1基程度は必要ですし、特に高層マンション、超高層マンションでは、台数が少ないと通勤時などに困った事態になりかねません。エレベーターがなかなか来なかったり、すぐに乗れなかったりして、1階に降りるまでに時間がかかって、遅刻の原因になりかねないのです。
さらに、防犯カメラがキチンとついているか、エレベーターのかごに窓がついていて、外部から見えるようになっているかなど、防犯面もチェックしておきたいところです。築年数の長いマンションだと、エレベーターも年代物で、ドアの開閉に時間がかかったり、速度が遅く、目的階に行くまでに時間がかかったりします。築古物件では最新の仕様に改善されているかどうかを確認しておきましょう。
マンションによっては、「2戸1」と呼ばれる、同一フロアの住戸2戸に対して、共用階段とエレベーターを1カ所ずつ備えたタイプの物件があります。共用外廊下がなく、同じエレベーターを使うのは、同じフロアでは2世帯だけになります。顔なじみになりやすく、コミュニティの形成に役立つとともに、プライバシーや防犯面などで安心感があります。
給湯器などの各種住宅設備の交換時期は?
専用部の居室内の各種の設備もキチンとチェックしておきましょう。不動産のプロは、図表3にあるように「給湯器(交換時期など)」(64.2%)をトップに挙げています。各種の設備には耐用年数がありますから、購入時には問題なく使えても、長い年数が経過しているため、入居後すぐに動かなくなって、取り替えが必要になるケースがあります。設備によっては数十万円かかることもあり、何かと物入りな購入直後の家計に大きな打撃になりかねません。営業担当者や所有者に承諾をとって実際に動かしてみると同時に、いつ設置したのか、経過年数なども確認しておくのがいいのではないでしょうか。それは給湯器だけではなく、お風呂、キッチン、トイレ、エアコンなども同様です。あまり不躾にならない範囲で、稼働状況を確認して、どれくらい使っているのかなどを確認しておくと安心です。
中古マンションは、少なくとも何千万円単位の高額の買い物なのですから、後悔のないように念には念を入れてチェックしておきましょう。それも、置かれている条件面、共有部分面、室内設備面などさまざまなレベルでチェック、見逃しのないようにしたいところです。
(文=山下和之/住宅ジャーナリスト)