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とはいうものの、かつてのアストンマーティンの過激な性格は、やや抑えられているように思う。エンジンは過激なパワーを炸裂させながらも、トロトロと街中を流すのに適している。低回転域でも粘り強い。1速でのスタートがマニュアルミッションの基本形だが、それを無視して3速発進に挑んでもエンストの心配はない。例の、猛獣のようにのべつまくなしに吼えまくることもない。そのあたりの調教は、現代のモデルらしく整えられているのだ。
やれ環境性能や自動運転だと、激辛スポーツカーにとってはアゲンストが吹き荒れる世の中になってしまったが、だからこそ、ともすれば古典的だと思えるマニュアルトランスミッションモデルが魅力的に映る。
それは、消えゆく古典的モデルへの最後の「未練」かもしれないし、だからこその「魅力」なのかもしれない。アストンマーティンは、その意味ではいまも確かに声高に走りのメーカーであることを叫ぶ。その象徴が、「ヴァンテージ・マニュアルトランスミッション」なのだ。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)
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