おそらく、日本に籍を置くマスコミ関係者で初めての試乗だと思う。
発想のスケールがあまりに壮大なこともあり、侃侃諤諤、世間を騒がせているイーロン・マスク氏率いるテスラの意欲作「モデル3」。微細なトラブルや生産の遅れがあり、日本導入時期はまだ見えない。注目されていながらも、なかなか試乗の機会を得られなかった。そんな希少モデルのステアリングを握り、感想を述べる機会を得られた幸運を感謝したい。
試乗は、米国ニューヨークのチェルシー地区周辺で敢行することになった。許された試乗時間は、わずか30分ほど。とはいえ、モデル3の独特の世界観を覗くことができたのは収穫だろう。
いつもならば、単独でドライブすることを基本としている。だが今回は、テスラのカスタマー・スペシャリストのMr.Mattのアドバイスを受けながらドライブすることにした。
というのも、電気仕掛けのモデル3は、専門家のレクチャーを受けずには、まともに発進させることすら困難に思えたからである。
試乗を前に窓越しにコクピットを覗き、腰が引けた。室内には、スイッチやダイヤルといった物理的な操作系がなく、ダッシュボード中央にiPadのような15インチモニターがひとつ括り付けられているだけ。発進はおろか、始動すらできそうもないのだ。
そこでまず浮かんだのは、我が家の事情である。僕も含めて極めて電気音痴の家庭である。PC関係の操作はもちろんのこと、ビデオデッキやWi-Fiシステムの配線はまったく不可能である。そればかりか、電球の交換すら自分ではこなせない。街の電気屋さんにわざわざご足労願って、家庭内の電気システムを任せているほどの電気音痴の家なのだ。それなのに、実はモデル3は先行予約済みなのである。
そんな筆者は、モデル3のインパネを覗き見て腰が引けた。よしんば納車したときに、これは我が家では扱えないかもしれないぞ、との思いが頭をよぎったのである。それほど異質のモデルに思えた。