メルセデス・ベンツ「C220d 4MATIC オールテレイン」の好燃費が話題になっている。
搭載するエンジンは直列4気筒2リッターディーゼルターボで、そこに48VのISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)が合体される。ISGは、欧州車が得意とするハイブリッドシステムであり、エンジンスターターと発電機を兼ねたシステムだ。それにより、アイドルストップからのモーター発進と共にエンジンが始動。モーターのみでは駆動しない。いわば、ささやかにエンジンパワーをアシストするマイルドハイブリッドなのである。だというのに、驚異的な燃費を誇る。
今回は1000kmを超えるロングドライブを敢行したのだが、結論から言えば、高速道路を主体とした行程での平均燃費は25.0km/l、通勤や取材の往復の移動で22.0km/l平均だった。昨今のガソリン価格の高騰を考えれば、燃料が軽油であることも嬉しい。
燃料を満タンにすると、オンボードコンピューターが表示する航続可能距離は1000kmを軽く超える。その状態で高速クルージングを始めれば、航続可能距離は1300kmまで伸びるというから驚きだ。これなら、東京-大阪間を無給油で往復可能で、しかもお釣りがくるほど。
それでも、走りにエコカーらしい消極的なそぶりはない。そもそもオールテレイン(“すべての地形”の意)である。「Cクラス」のステーションワゴンをベースに、クロスカントリー的な改良が施されている。フェンダーを取り囲む艶消し黒のモールからも想像できるように、アウトドア色が強調されているのだ。
前後のバンパー下にも、荒れ地の踏破性を高めるためのガードが目に付く。最低地上高も確保されており、アクティブな使い方に対応しているのだ。
もちろん、デザイン的に細工だけしただけの軟弱モデルではない。駆動方式は4マチックである。巧みに駆動制御するAWDシステムだから、悪路踏破性に不満はない。それだけではなく、ステランティスN.V.「ジープ」やトヨタ自動車「ランドクルーザー」など硬派なクロスカントリーモデル並みの重装備だ。横転や前転を避けるための傾斜計も備わっている。ダートの急勾配をユルユルと下るためのコントロール機能も組み込まれている。とてもエコカーとは思えない雰囲気だ。
さらには、高級感も備わっている。装備の充実度は想像を超えるレベルである。それでいて、乗り心地も優しい。もちろん、VIPセダン級な快適性ではないが、少なくともクロスカントリーモデルとは思えない優しさなのだ。
ディーゼルエンジンのガラガラサウンドは遠慮なく室内に侵入してくる。だが、それが不快な音でもリズムでもなく、品よく調律されている。あえてディーゼル音を聴かせているかのようだ。ディーゼルであることは、決してネガティブな材料ではなく、むしろ誇らしいことのように思えてくる。
SDGs(持続可能な開発目標)が叫ばれている今、環境負荷の少ないディーゼルエンジンであることは、インテリジェンスを感じさせる。自然の中を突き進みつつも、自然に優しいのである。それでいて25.0km/lの燃費を誇るわけで、開いた口が塞がらない。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)