大会社の女性経営者は少数
前出の「全国女性社長」調査結果によると、女性社長が経営する会社の業種は、生活に身近なものが多い。
「産業別では、宿泊業、飲食業、介護事業、教育関連などを含むサービス業他の12万5388社(構成比40.4%)が最も多かった。また、産業別の『女性社長率』で最も高かったのは不動産業の21.0%で、5人に1人の割合を占めた。女性の起業は、個人向けサービス等の暮らしを充実させる分野での事業展開が多いという。女性の視点による商品開発やサービス提供が、新たな需要を掘り起していることも女性社長の増加に影響している」(同調査より)
逆に大企業では、まだまだ女性社長の率は低い。3000社強ある上場会社で、女性社長(代表執行役を含む)は29社(14年12月現在判明分)だけだった。その中で14年に1億円以上の役員報酬を得た女性社長は、日本マクドナルドホールディングスのサラ・カサノバ氏のみである。
この惨状は経営幹部のレベルでも同様だ。4月16日にコンサルティング会社の太陽グラントソントンが発表した「中堅企業の『女性経営幹部』に関する世界35カ国同時調査」によると、日本における割合は8%で、35カ国中最下位だという。
女性経営者が急増したといっても、やっと割合で2桁となった程度である。筆者が指導してきた多数の経営者の中でも、女性社長は2人しかいない。少数派の女性経営者の中でも、率いる会社の規模感から最大なのがテンプホールディングスの創業会長、篠原欣子氏だ。篠原氏には、光栄なことにスカウト面接をしてもらったことがある。1983年に筆者がMBA留学から帰国した際のことだった。
篠原氏を含めても、日本人女性経営者を多く存じ上げているわけではないが、経営者として成功してきた彼女たちには、やはり共通点があった。
まず、経営者として優秀なこと。それは男性社長と変わることはない。次に、家族からの理解や支援があるか、いっそ家族関係を作らない、つまり独身であること。最後に愛嬌があること、魅力的であると言い換えてもいい。日本のビジネス社会は、まだ男性多数で構成されている。冒頭の調査結果も、裏返せば社長の90%弱は男性ということを示している。その中に分け入ってコミュニケーションが取れ、ビジネスを開拓・獲得していく女性社長たちは魅力的な人柄の人が多いのだ。篠原氏も、お会いしたのは30年以上前のことだが、素敵な人だった。
こんなことを書き連ねてくると、今年の話題の女性社長、大塚家具の大塚久美子社長のことはどう評すればいいのだろうと思ってしまう。
(文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役)