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マック元社長に潰されかけたリンガーハット、批判&反対殺到の戦略断行で鮮やかな復活

文=福井晋/フリーライター

 八木氏は新社長に就任するやいなや、経営改革と称して断行したのがオール電化調理システムの導入と値上げだった。麺を生麺から冷凍麺に変更、具とスープも冷凍し、それを一人前ずつ冷凍庫に保存、注文を受けるとつくり置きした「冷凍ちゃんぽん」を電磁調理器で過熱して配膳するオペレーションに変更した。

 八木氏は「これで客の待ち時間が平均10分から8分へ2分ほど短縮し、顧客満足度が向上する」と説明したという。ファストフードの即席調理法を無定見に郷土料理の長崎ちゃんぽんに応用したのは明らかだった。冷凍ちゃんぽんは、生麺を茹でて中華鍋で野菜などの具を炒め、それらをスープで合わせる従来の調理法と比べ、味が段違いに劣っていた。そこに399円から450円への値上げが加わり、客足が一挙に遠のいた。

 すると八木氏は07年夏、日本マクドナルドで失敗を経験したクーポンを集客の目玉に導入した。クーポンを持参すると一皿450円のちゃんぽんが100円引きとなり、「値上げ前より安い350円で食べられる」と人気になり、味をあまり気にしない客層の足が戻った。これで成功と過信した八木氏は、クーポン発行を常態化した。

 しかし、クーポン発行の常態化は消費者に実質的な値下げと受け止められ、やがて「長崎ちゃんぽんはまずかろう、安かろう」のイメージが定着、その安さも間もなく消費者に飽きられていった。

 08年になると既存店の約30%が赤字に転落、半年間で454店中48店も閉鎖に追い込まれ、誰の目にも経営危機が明らかになった。09年2月期の連結決算は売上高が前期比3.3%減、営業利益が71.8%減の減収減益、純損24億円は上場以来最大の赤字幅だった。

再値上げ宣言

 八木氏は任期途中の08年9月に引責辞任に追い込まれ、米濱氏が会長兼任で社長に復帰した。「値下げによる集客は邪道」と周囲に漏らしていたといわれる米濱氏は、社長に復帰すると真っ先にクーポン発行を廃止、地に堕ちたブランド再生に取り組んだ。

 それから1年。公の場で鳴りを潜めていた米濱氏の第一声が先の再値上げ宣言だった。ただし、これには「リンガーハットは09年10月1日から日本国内で採れた新鮮な生鮮野菜しか使いません」と「国産野菜100%採用」宣言が付随していた。

 05年5月、会長に退いた米濱氏は06年から08年までの2年間、日本フードサービス協会会長を務め、業界活動に専念していた。その時、全国各地の野菜産地を巡る機会があり、国産野菜のおいしさを再認識していた。その経験から、地に墜ちた「長崎ちゃんぽん」ブランドを再生するためには「おいしくて安全・安心な国産野菜100%の長崎ちゃんぽん」をウリにするしか道はないと決断していた。

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