ルノーは日産に約43%出資しており、定款の変更が成立するには出席株主の3分の2以上の賛成が必要で、ルノーが棄権した場合、確実に不成立となる。指名委員会等設置会社への移行を決めた日産の取締役会で、日産の取締役を兼務するスナール会長をはじめ、ルノー出身の日産の取締役は賛成していたこともあって、日産は「誠に遺憾」とのステートメントを公表。両社の争いが再燃した。
スナール会長は「日産のガバナンス改革に反対しているわけではない。(指名委員会等設置会社で新設される)委員にルノーのティエリー・ボロレCEOも入れてほしいだけ」と述べた。指名委員会等設置会社では指名・報酬・監査の3つの委員会が設置される。日産の当初の案では、スナール会長は委員だが、ルノーのボロレCEOは委員に入らない予定だった。
株主総会の開催が迫るなかで、「ガバナンス改革は絶対に譲れない」(西川社長)ことから、日産はルノーの「脅し」ともとれる要求を受け入れ、スナール会長が指名委員会の委員、ボロレCEOが監査委員会の委員に就任することとしてルノーの賛同を取り付けた。
業績悪化で追い込まれた西川社長
ルノーが資本の力を利用して日産に要求を受け入れさせたことに対して、日産社内では反発する声が強まっている。ルノーは日産に約43%出資するが、日産より企業規模が小さい。そして日産はルノーに15%出資するが議決権を持たないといういびつな関係にある。日産社内では、ルノーと提携を継続しても、ルノーへの出資比率を引き上げて資本関係を公平にすることを求める意見は少なくないという。
ただ、ルノーから「脅し」を受けた日産の西川社長は、態度を微妙に変えつつある。西川社長は、これまで業績回復を優先するため、ルノーからの経営統合要求を拒否してきたが、株主総会で「議論を先送りすると憶測を呼んで、事業活動に影響して動揺する懸念がある」として、資本関係を含めて両社の提携関係見直しをスナール会長と議論する考えを明らかにした。
西川社長は長年にわたってゴーン氏の側近として仕えてきただけに、報酬の虚偽報告や特別背任罪などの「不正をまったく知らなかったというのは考えられない」(株主の日産系サプライヤー)。加えて2019年3月期の日産の業績は米国事業の不振で大幅減益となり、西川社長の経営責任を問う声も強まっている。