要するに、力のある大手企業は事業規模を縮小することで働き方改革を進めることができるが、それは業界の問題を根本的に解決する施策ではなく、やはり下請けの中小企業にしわ寄せがいっているだけということのようだ。大手企業に所属できているルートドライバーは業界内のほんの一部で、大半は中小企業に所属するルートドライバーであることを考えれば、大手企業の施策は“臭い物に蓋をした”だけのように思えてしまう。
高利益を支えるドライバーたちへの負担減が急務
かなり根深いブラックな問題を抱えているように感じる自販機業界だが、改善の余地は残されているのか。池田氏は次のように考えている。
「どこか1社の力で、業界の改革を行うことはほぼ不可能でしょう。会社ごとの競争が激しい業界であるため、こういった改革に踏み切ると、企業としての屋台骨を揺るがす事態になりかねないからです。特に、大きな資本がある大手企業と違い、中小企業には余裕がない場合が多い。ですから本気で業界の労働環境を健全化したいのであれば、大手企業が仕事を振っている各中小企業に適正な料金で依頼するなどし、余裕のある労働条件で働けるようにしていく必要があるでしょう。
そもそも、すでに日本の自販機の数は飽和状態です。そのため今後も企業同士が競争を続けていけば、それは市場の取り合い……つまり、潰し合いになってしまうのは目に見えています。そういった状況に陥れば、またそのしわ寄せが中小企業のドライバーに向かい、低賃金・長時間労働に拍車がかかることもあるでしょう。今後は企業同士が競争するのではなく、協力していくことが求められているのです」(同)
大手企業は不採算自販機を下請けの中小企業にまわすのではなく、撤去していき、日本全体の自販機の数を減らしていけばいいという考えもあるだろう。しかし、飲料メーカーからすると、自販機は売上の約4割をメーカー側の取り分とできるため、仕入れ時点で買い叩かれるスーパーやコンビニなどその他の販路と比べて、利益率が非常に高いのだという。
だが逆に考えれば、そんな高利益率の自販機という販路を支えているルートドライバーに、給与アップというかたちで還元することや、人員増で各ドライバーの負担を減らすということも、可能のようにも思える。自販機は我々に便利な生活を提供してくれる身近な存在だけに、それに従事するルートドライバーたちの労働環境が改革されることを願うばかりだ。
(文=A4studio)