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舘内端「クルマの危機と未来」

クルマのカタログ燃費と実燃費の大きな乖離は、いい加減に解消されるべきである

文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表
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加速で燃費の良いプラグイン・ハイブリッド

 プラグイン・ハイブリッド車は、電気の力だけで50キロメートルほど走れる。これは日本の場合、平均的ドライバーの1日の走行距離よりも長い。つまり、プラグイン・ハイブリッド車であれば、まったくエンジンを使わずに、ガソリンも軽油も使わずに1日以上走れることになり、その範囲であれば排ガスもCO2もゼロである。「いや、私はもっと走る」という方もいらっしゃるかもしれない。ただ、運転に割ける平均的な時間となると、日米欧でそれほど大きな違いはないようだ。

 たとえば通勤に自家用車を使う人の運転時間は、自宅と職場の往復で多くて1時間ほどであろう。2時間や3時間になると、生活に少なからぬ支障が出る。家で自動車を使うにしても、子供たちの塾の送迎と買い物で1時間ほどではないだろうか。こうした自家用車使用の平均時間は、日米欧でさほど違わず、生活に支障が出ない範囲での使用時間にとどまる。

 違いがあるとすると、走行速度だ。ハイウエイの発達した米国、アウトバーン網が整備されたドイツでは平均速度が高く、運転時間が同じでも走行距離は多くなる。1日の走行距離を取材すると、日本ではおよそ30キロメートル、欧米で40~50キロメートルほどである。

 このようなデータから、自動車会社に販売台数の一定割合を排ガスゼロ車にするよう義務付ける米国の規制、いわゆるZEV規制では、プラグイン・ハイブリッド車のモーターだけの走行距離をおよそ50キロメートル以上としており、各国の自動車メーカーはそれに合わせている。プラグイン・ハイブリッド車は、日常の使用であれば市街地で排ガスもCO2も出さない自動車ということができそうだ。

 VWは排ガスやCO2排出量の偽装工作で大きくつまずき、WLTCが提案される昨今であるが、考えてみればこれは前世紀的な問題であり、規制である。ZEV規制のように「もう自動車は排ガスもCO2も一切出すな」という根本的な規制こそが、今世紀に世界中で実施されるべきかもしれない。
(文=舘内端/自動車評論家、日本EVクラブ代表)

舘内端/自動車評論家

舘内端/自動車評論家

1947年、群馬県に生まれ、日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。
現在は、テクノロジーと文化の両面から車を論じることができる自動車評論家として活躍。「ビジネスジャーナル(web)」等、連載多数。
94年に市民団体の日本EVクラブを設立。エコカーの普及を図る。その活動に対して、98年に環境大臣から表彰を受ける。
2009年にミラEV(日本EVクラブ製作)で東京〜大阪555.6kmを途中無充電で走行。電気自動車1充電航続距離世界最長記録を達成した(ギネス世界記録認定)。
10年5月、ミラEVにて1充電航続距離1003.184kmを走行(テストコース)、世界記録を更新した(ギネス世界記録認定)。
EVに25年関わった経験を持つ唯一人の自動車評論家。著書は、「トヨタの危機」宝島社、「すべての自動車人へ」双葉社、「800馬力のエコロジー」ソニー・マガジンズ など。
23年度から山形の「電動モビリティシステム専門職大学」(新設予定)の准教授として就任予定。
日本EVクラブ

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