25年以上にわたり1000本を超すテレビCMを中心にマーケティング戦略立案に携わってきた鷹野義昭氏が、新たに年間2万本以上オンエアされるといわれるCMについて、狙いやポイントはどこにあるのかなど、プロの視点からわかりやすく解説する。
最近、何かと話題になっている地方振興を目的としたPR動画。なかには、全国ネットのテレビ番組などにも大きく取り上げられ、皆さんもすでにご覧になって印象に残っているものもあると思います。
今回は、テレビCMにおけるマーケティング戦略の視点から、秀逸な地方PR動画を取り上げ、その秘密と効果、さらには落とし穴にまでフォーカスしてみたいと思います。
地方CMとは異なるPR動画
一般的なテレビCMは、15秒、30秒といった枠のなかで制作され、広告主がお金を支払ってオンエアされます。一方、PR動画は動画素材自体を制作するものの、ユーチューブなどの動画閲覧サイトに公開することで、媒体費がゼロ円というものがほとんどです。
筆者が代表を務めるテムズが運営するHP「ぐろ~かるCM研究所」では、秀逸な地方CMとともに、オンエアされていないPR動画もノミネートし、専門家集団が評価してランキング形式で全国に紹介しています。
ローカルゆえのユニークな発想や優れたアイデアが詰まった地方CMは多く存在しますが、今、そんな数あるローカルCMを抑え、地方PR動画が軒並み高得点を獲得しています。莫大な契約費のかかる有名なタレントを使っているわけでもないのに、多くの人に注目されるPR動画には、いったいどのような秘密が隠されているのでしょうか。
まずは話題になっている代表的なPR動画をいくつか見てみましょう。
【「ンダモシタン小林」移住促進PR動画】
霧島連山とその麓に広がる生駒高原、豊かな自然に囲まれた宮崎県小林市の移住促進PR素材です。遠いフランスから移住してきた男性が、小林市の魅力を語り、日本語のテロップとともに紹介していきます。小林市の美しい長閑な風景と、郷愁を誘う音楽も合っています。ところが最後に、フランス人の彼がしゃべっていたのは、地元「西諸弁」であることが明かされます。思わず最初から観返してしまうナイスアイデアな動画です。
【「おんせん県おおいた」シンフロジェクト】
「おんせん県おおいた」の定着を狙った第2弾シリーズ。元・日本代表選手が率いるプロのシンクロチームが、露天から砂風呂まで大分各地の温泉でシンフロ! 華麗な演技に目が釘付けです。周りの入浴客の表情は、茫然から歓喜へと変わっていきます。「日本一の温泉で、世界のみんなを沸かせたい」――そんな思いがひしひしと伝わってきます。