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ここが肝だよ!テレビCM戦略

美容師が髪を喰いちぎる岐阜、セクシー美女の佐賀…地方PR動画が過激すぎる!

文=鷹野義昭/CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター

800万円の投資が8億円の価値に?

 小林市のPR動画は、制作費が4本でわずか800万円と聞いています。つまり、1本当たり約200万円ほどです。8月27日に公開されてから現在までに、テレビ番組に取り上げられたのは中央キー局を含む約40番組、CM露出換算(仮に同一な秒数をテレビCMとして流した場合の金額)で8億円を超えるともいわれています。

 実は筆者自身、恥ずかしながらこの動画で小林市を初めて知りました。一般的に、新商品のブランド認知を全国レベルで0%から50%にまで広めるためには8億円程度のテレビ媒体費がかかりますから、PR露出換算金額の価値の公表数値はあながちオーバーなものとはいえないでしょう(テムズ・広告効果シミュレーションシステムにて算出)。

 小林市の例からもわかるように、PR動画は一度制作したら、その後の維持費はほとんどかかりません。また、一般的なテレビCMのようなテレビ局側の厳しい考査がなく、15秒、30秒といった尺の制約もないので、地域特色のメッセージを自由に、より多く盛り込めることも利点として挙げられるでしょう。

 こうしたことを背景に、「ゆるキャラ」ブームが起こったように、各地方自治体はこぞってPR動画制作に目を向けていくことでしょう。市民権を得るために大変な労力と時間が必要なゆるキャラと比較してみると、PR動画の持つ可能性はとても魅力的に感じられます。
 
 しかしながら、地方自治体がPR動画に取り組むことは、良いことづくめで成功ばかりが約束されているのでしょうか。

ブームに乗った地方PR動画制作に潜む落とし穴

 忘れてはいけないことは、今話題の「成功した」といわれている地方PR動画は、決して安易につくられたものではないということです。今回取り上げたどのPR動画も、広告代理店や制作会社に丸投げではつくり得なかったものであり、実際に地元担当者たちの多大なる「生みの苦しみ」のもとに誕生しているのです。

 たとえば小林市の場合、同市の持つ魅力を映像とナレーションで十二分に伝えたうえで、話題性やインパクト獲得のために最後で西諸弁だったネタを明かし、リピート視聴につなげています。それが「移住促進」という大テーマに対し、「小林市の認知」という基本的なスタート地点や間口を確実に広げているのです。こうした緻密な設計に向けて、官民一体となって取り組んだ結果なのです。

鷹野義昭

鷹野義昭

株式会社テムズ代表取締役<CM戦略アナリスト・マーケティングディレクター>
1963年、長野県生まれ。大手広告代理店を経て、90年より現職。テレビCMを中心としたマーケティング戦略立案に携わり25年以上。1000素材を超すテレビCMの戦略策定・分析・広告効果測定の実績を持つ。
主な著書に『CM好感度NO.1だけどモノが売れない謎 ‐明日からテレビCMがもっと面白くなるマーケティング入門‐』(ビジネス社)などがある。近年では、秀逸なローカルCM・地方PR」動画を集めたサイト「ぐろ~かるCM研究所」の所長を務める。

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