近年「ハッカソン」という言葉がよく使われるようになっている。もともとはIT関係のプログラマーやデザイナーが構成するチームが、限られた時間でプログラミングなどに没頭し、アイデアや成果を競い合う開発イベントであるが、企業やさまざまな団体によっても開催され、多くの分野に拡大している。
こうした中、東急東横線の武蔵小杉駅周辺に住む住民たちが、自分の住む街の可能性を探ろうとハッカソンを行った。その名も「コスギソン」。武蔵小杉は高層マンションが数多く建設され、急速に若い住民が移り住んでいる東横線沿線のおしゃれな街のひとつである。一方で長い歴史があり、昔から住んでいる住民も多く、いわゆる新住民と旧住民が混在している街でもある。
コスギソンは住民同士、世代を超えて老若男女が理解し合う場を設けて、より住みやすく楽しい街を実現しようという試みで、主催はワークショップなどを通じて街の中に新たなコミュニティをつくり街の活性化を目指す「コスギコンビビアルプロジェクト」。9月中旬に行われたコスギソンでは、近未来のカフェをつくるアイデアを2日間にかけて形にしてゆくワークショップが行われた。エンジニアやプログラマーなどITのプロに加えて一般の人も参加し、さまざまな意見やアイデアをぶつけあった。
世代、地域を越えて交流
武蔵小杉は大手企業の工場や研究所などが近くにあり、「エンジニアの街」としてものづくりに挑戦するスピリットにあふれた気風がある土地柄でもある。会場となった「コスギカフェ」は熱気に包まれた。
2日間で延べ27人が参加し、5つのグループに別れてアイデアを練った。その場にいない人でもスマートフォンから参加できる次世代型のオセロゲームの大会や、子育て世代やシニア世代をマッチングさせ、シニア世代にカフェでチャイルドケアをしてもらう間にママが自由な時間を楽しむことができるようにするアイデアなど。地元の住民ならではのニーズやプランを形にしようと頭をひねった。
2日目には各班がプレゼンテーションを行い、それぞれのユニークなアイデアを、工夫を凝らしてアピールした。審査員には各分野の専門家のほか一般住民も加わり、その結果、最優秀賞には、カフェの店内に置かれた紙の地図の上に「MESH」という電子ブロックを置くことで、センサーが反応して、地図上におすすめのお店の情報が浮かび上がる「COSUGI ハンター’s CAFÉ」が選ばれた。カフェの利用客が過去に登録し蓄積した情報を基に、利用客がお茶をしながら時間を超えて地元の人々が投稿した生の店舗情報にアクセスできる仕組みが評価された。
地元に住む高校生の参加者は「プログラマーやエンジニアなど大人と一緒に活動するのは不安だったけど、形になったときはうれしかった」と話す。
また別の参加者は「武蔵小杉は新しい街なので世代間や地域間の交流が少ない。こうしたイベントがあれば交流が生まれる」と継続したイベントとして育ててほしいという考えを示していた。
こうした「地域をハックする」という試みは斬新で、武蔵小杉のみならず、さまざまな場所での応用が可能だ。デジタル全盛の時代となり、かつてできなかったことが今は技術の力でできる時代になっている。今後、こうした「ご当地ハッカソン」が全国的に波及することも期待できそうだ。
(文=編集部)