12月12日、自民・公明両党合意で、軽減税率の対象品目が「食品表示基準に規定する生鮮食品及び加工食品(酒類及び外食を除く)」となった。ここで問題となるのが「生鮮・加工食品と外食との線引き」、そして「食品と非食品の線引き」である。
販売形態が多種多様化している日本では、たとえば「店内で食べれば外食、持ち帰れば食品」とは簡単にいかない。しかも、税金というお金に関する法律である。あいまいさを嫌う日本人は、明確な線引きがないと納得できないところがある。あいまいな線引きをすれば、それだけ税金逃れも増える。その線引きがいかに難しいかを、具体的な事例で考えてみよう。
食品表示基準で外食は定義されていない
合意文書では「食品表示基準の規定」が軽減税率の線引きの目安となっている。では、食品表示基準で定義されている生鮮食品及び加工食品とはなんなのだろう。食品表示基準では、生鮮・加工食品と外食の区別はされているのか。食品と非食品との区別はされているのだろうか。
食品表示基準で規定されている加工食品は「製造又は加工された食品」であり、生鮮食品は「加工食品及び添加物以外の食品」である。軽減税率の対象外である酒類は、食品表示基準を定めている食品表示法で「酒税法に規定する酒類」と定義されているので明確になっているが、食品表示法および食品表示基準で「外食」の定義はない。
ただし、食品表示基準では「食品表示が義務付けられているかいないか」で、外食といえる線引き規定がある。食品表示基準は、何にどんな表示をするかが定められている法律である。この「何に」という規定に外食らしき線引きがある。
食品表示基準には「設備を設けて飲食をさせる場合には、生食用牛肉を除いて適用しない」という規定がある。だから、飲食店で注文する料理には、原材料や添加物、原産地などの食品表示がされていない。この「設備を設けて飲食をさせること」が、一般的に外食といわれているが、法律用語として「設備を設けて飲食をさせることが外食だ」と定義されているわけではない。
どこで食べるかで線引きするのは無理がある
外食という言葉は、一般的には「家庭内ではなく、家庭の外で飲食すること」という意味になるだろう。しかし、小売店や飲食店が消費者に販売する際に、どこで食べるかで税率を変えて販売することは不可能といってよい。
コンビニエンスストアで、電子レンジで温めた弁当や惣菜を持って帰れば8%の消費税で、店舗内で食べたら10%になるとすると、店頭でお客が「持って帰ります」と言って支払いが済んでから、「気が変わったから店内で食べた」と言う客に、「2%を追加して支払え」とは言えないだろう。
『一冊で分かる!食品表示』 食品表示なら、この一冊! 食の安全・食育・食品表示問題の第一人者、垣田達哉が 2015年4月施行の食品表示法を豊富な図表と表示例で徹底解説。 第1章では従来の食品衛生法、JAS法、健康増進法と「食品表示法」では何が変わったかを解説。 また食品表示全体の理解のために第2章では生鮮食品の表示の基本を、 第3章では加工食品の表示の基本を解説。食品表示初心者の方にもわかりやすい一冊。