12月12日、2017年4月の消費税率10%引き上げ時の軽減税率導入について、自民・公明両党が合意した。軽減税率の対象品目は「酒類および外食を除く食品全般」であり、「対象品目の線引き」や「財源確保」などの問題点が早くも指摘されている。
軽減税率とは、「国が席料(チャージ料)を飲食店経由で徴収する」と考えるとわかりやすい。高級店であろうとなかろうと、すべての飲食店で席料が徴収されることになる。席料がある高級店などでは、店に支払う席料に加え、飲食費の2%を席料として国に支払うことになる。
ところが、報道によると「もし、持ち帰りの客の気が変わり、店内で食べれば『8%のままにするしかない』(政府関係者)」という。(12月20日付読売新聞)」
そうなると、飲食店では「気が変わりました客ばかりになる」可能性がある。気が変わり客で席がいっぱいになり、正直に「店内で食べます」といった客は座れないという“正直者が馬鹿を見る事態も起こる”だろう。
そもそも「最初から、気が変わったと言えば税金を払わなくてもよい法律を作る」こと自体、大問題である。財務省は、本気でそんな法律を作ることを考えているのだろうか。
本稿では、軽減税率が導入された場合に発生し得る想定事例や問題点、店舗側の対応などについて検証してみよう。
屋台の事例が席料の証
軽減税率は国が徴収する「席料」であるということは、屋台を例にすると理解しやすい。屋台では、立って食べれば非外食(消費税8%)、座って食べると外食(消費税10%)になる。しかも、その座席料は店に支払っているわけではなく、店を経由して国に徴収されているのである。
現在検討されている線引では、椅子が置いてある屋台は外食で、置いてない屋台は非外食となる。それではお客にわかりづらいので、店側は「外食専用」「立ち食い(非外食)専用」といった貼り紙をすることになるだろう。
ラーメン屋の屋台
客「ここのラーメンはおいしいって聞いたから来たんだけど、屋台の横で立って食べるから、容器も持ち帰り用でいいから消費税8%で頼むよ」
店主「評判を聞いてわざわざ来ていただけたんですか。わかりました。ちょうど今ほかにお客さんがいないので、どうぞ座って食べてください。消費税は8%で結構ですから」
このお客がLINEで仲間にこのことを伝えると、「座って食べても8%の優しいお店」と評判になり繁盛する。それを聞きつけた税務署が屋台に駆けつけ、店主に「脱税するとはけしからん。今度やったら逮捕するぞ」と厳重注意をする。