国内外の一流プロ野球選手から注文殺到!小さな用品メーカー、なぜ倒産から復活&急成長?
市場が縮小するなかでの、中小メーカーの生き残り策
昭和時代には男性の「Do Sports」(やるスポーツ)の絶対的王者だった野球も、厳しい時代を迎えている。少年の選手登録数はサッカーに逆転されており、草野球を楽しむ大人の姿も昔に比べて少なくなった。国内における人口減少の数倍の速さで進む「競技人口の減少」に、危機感を抱く球界関係者もいる。
そんな時代にベルガードが取り組むのは、大手メーカーが注力しない分野の深掘りだ。たとえば、女性用の野球用品もそのひとつだ。同社のグローブやミットはオーダーメイドで製作できるので、ハートをあしらったグローブや派手なグローブを注文する選手もいる。一つひとつの注文に真摯に応えることで、アマチュア選手などの個人客を地道に増やしている。ミット製作の「名人」として名高い佐川勉氏(有限会社佐川運動具製作所社長)が、革の型から抜いて一貫製作した商品もある。
生き残りのためには、窮地のときに自分自身を見失わない判断も大切だろう。実は倒産直後のベルガードには、韓国企業から支援オファーがあった。永井氏らが先方企業に入社するのが条件だったため、ブランドや技術の国外流出を懸念してオファーを断って起業を選択した。
大口取引先の喪失が、追い風となることもある。ベルガードにOEMで防具を注文していた多くの大手メーカーは、自社の技術ではなかったため、防具市場の開拓に興味があっても、現状では同分野を強化することができない。
「これからも大手企業が注力できない分野で勝負して、品質を追求していきたい。メイド・イン・ジャパンのクラフトマンシップには負けない自信があります」(同)
新卒で就職すれば何十年も安泰――とはいかない時代。ベルガードと永井氏の事例は、「自らの強み」や「転ばぬ先の杖」として学ぶことができそうだ。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)