新宿にあるとんかつ店「王ろじ」。同店は大正10年(1921年)創業の老舗のとんかつ店です。90年以上も営業していることになります。
店名の王ろじには、「路地裏の王様になる」という思いが込められているそうです。新宿という繁華街に位置しているとはいえ、同店の立地は決して人通りの多い場所ではありません。人通りが少ない路地裏でひっそりと営業しています。しかし、路地裏でも行列ができる繁盛店です。
これは、モスバーガーの路地裏戦略に通じるものがあります。モスバーガーが戦場とするハンバーガー業界では、マクドナルドを筆頭に駅前などの一等地に出店するのが王道とされています。しかし、モスバーガーは競合を避けるために、路地裏などの二等地、三等地にあえて出店し、味と品質にこだわる顧客層をターゲットとして競合との差別化を図っています。モスバーガーも、まさに路地裏の王様です。
「二等地や三等地に出店しても儲からないのではないか」と思う人もいるかと思いますが、数値を見てみるとそんなことはないということがわかります。日本のハンバーガーフランチャイズ店におけるモスバーガーのシェアは、マクドナルドに次いで2位です。モスバーガーを運営するモスフードサービスの2015年度の経常利益率は2.3%と好調です。路地裏でもマーケティング次第で十分に儲けることができるのです。
王ろじも同じです。路地裏でも行列ができています。筆者が訪れた時にも行列ができていました。
看板には「創業大正十年」とあり、老舗をアピールしています。
とんかつの発祥が同店という説もあります。実際のところはよくわかりませんが、創業大正十年という重みが「とんかつの発祥店」であると人々に信じさせる力となっているのかもしれません。老舗は、それだけでブランド力があります。
さて、待つこと約20分で入店できました。同時に「いらっしゃいませ!」と魂が込められた挨拶が届けられました。筆者はこの瞬間、王ろじが強く顧客から支持されていることを理解しました。「この挨拶が大正10年から続いている」と思っただけでゾクっとします。
挨拶が行き届いている店は少なくありません。ただ、「魂が込められた」と表現できるほどの挨拶を受ける経験は滅多にありません。同店の挨拶は、まさに魂がこもっていました。食べる前から繁盛店としての一端を感じることができました。