爆買いが明暗を分ける
爆買いの異変はテーマパークの明暗を分けた。東京ディズニーランド(TDL)、東京ディズニーシー(TDS)の入場者はマイナス。一方、大阪のユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)は入場者を大幅に増やした。
USJを運営するユー・エス・ジェイは5月26日、15年の世界テーマパークランキングで、入場者数がTDSを抜いて世界4位になったと発表した。同ランキングは、米テーマエンターテインメント協会が毎年発表している。
USJの15年の入場者数は17.8%増の1390万人。3.5%減となったTDSの1360万人を上回った。
1位は米フロリダ州にあるウォルト・ディズニー・ワールドのマジックキングダム、2位は米ディズニーランド(カリフォルニア州)、3位は東京ディズニーランド。ちなみに、TDLは前年比4.0%減だった。
USJの16年3月期の入場者数は、15年暦年と同数の1390万人で前期を9%上回った。14年7月に開業した「ハリー・ポッター」のエリアが引き続き人気を保った。訪日外国人の入場者数は140万人で、前期から60万人増加。全体の入場者数を押し上げる要因となった。
業界のガリバー、オリエンタルランドが運営する東京ディズニーリゾート(TDR)の16年3月期の入園者数は、TDLとTDS合算で3.8%減の3019万人。訪日外国人入場者数は開示していない。
外国人入場者の割合はUSJが10%を超える。数字を公開していないTDRは6%程度と推測されている。
TDRがインバウンド需要、とりわけ爆買いの中国人を取り込めなかったことが入場者数が伸び悩んだ原因と分析されている。ディズニーのテーマパークは米国、フランス、香港にあり、6月16日には上海にもオープンした。中国国内にもあるディズニーランドに行くために、わざわざ東京まで足を伸ばすことはないと考える人も多いだろう。
USJは「ハリーポッターエリアがあるのは米フロリダと大阪だけ」という希少性をウリに外国人観光客を取り込んだ。この差が、USJがTDSの入場者数を逆転する原動力となった。
中国風の味付けが施された上海ディズニーランド(SHDL)の入園料は、平日は370元(約5800円)だが、週末や夏の繁忙期などは499元(約8000円)となり、TDL(7400円)などと同水準になる。所得水準が高くなっている中間層を呼び込むことで年間1000万人の入場者を見込む。SHDLの建設費は340億元(約5500億円)で、運営は米ウォルト・ディズニーと地元企業の合弁会社が担う。園内に2つあるホテルは、6月は予約で満室状態だという。新華社通信は、初年度の入場者数を1200万人と予測している。
今後、TDRとSHDLの間で、東南アジア観光客を呼び込むための熾烈な競争が繰広げられることになる。SHDLもTDRに倣って年間パスポートを発行するのだろうか。
USJはディズニー同士の綱引きの圏外にあり、漁夫の利を得る可能性もある。
(文=編集部)